透き通った湖 魚が見えるー台湾のアーティストが日本語歌詞を歌う件について、私はこう思う。

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皆さんこんにちは!タピレコです。今日は、台湾のアーティストが日本語歌詞を歌うことについて書いてみますね!

 

 

  

意外と多い?日本語歌詞不要派。

 

先日、台湾文化センターにて開催された「台湾ポップス&台湾における日本ポップスの今」という講座にて、ゲストプレゼンテーターのケン・ウーさんより「台湾のアーティストが日本デビューする際、日本語歌詞は無くても良いと思う方はいらっしゃるだろうか」という問いかけがあった。

 

すると、その日来ていたお客さんの合計約80名のうち約7割もの方が挙手していた。

 

関連記事:【詳細レポート】台湾ポップス&台湾における日本ポップスの今 ~台湾における台湾と日本の音楽交流の現状~後編

 

実は私も挙手したうちのひとり。「台湾のアーティストが日本語歌詞を歌わなくても好きになる派」なのだが、その裏にちょっぴり面倒な本音を抱えている。が、せっかく記事を書くのに、嘘を書いてもしょうがない。この場だからこそ、本音をたっぷりと書かせてもらおうと思う。

 

日本にないものが見たい

 

私が台湾をはじめとしたアジアの音楽を開拓する場合、Youtube(あるいは、Street Voice)で試聴することも多いが、いつも「あー、これから聴く曲が、どうか日本にはないセンスのものでありますように!!」と願いながらクリックしている。

 

というより、日本どころかこれまでの人生で出会ったことのないものが聴きたいと思っている。

  

そういうタイプなので、これまでを振り返ると作品がもたらす衝撃に惹かれて好きになったパターンが多い。そして「せっかくだから何を言っているか知りたいなぁ」と中国語を本格的に学び始めたのが27歳のころだった。

 

とはいえ、日本語歌詞もセンスさえ良ければ好きだし助かる

 

というわけで私は中国語初学者なのだが、勉強をしていて気付いたことがある。日本語と中国語では一音に乗せられる情報量が異なるのである。

 

たとえば、中国語の主語は性別、年齢問わず「我」wo,ウォの1音節で足りる。対して日本語の主語は「わたし」であればwa-ta-shiで3音節必要となる。「俺」の場合もo-reで2音節だ。

 

(補足:昔は日本でも「わ」と言ったそうだけれど、今はほとんど使っている人はいませんよね。我が国、とは言ったとしても。)

 

また中国語のオンラインスクールで、ネイティブの先生に作文の指導をしてもらったとき「中国語では、同じ意味ならば短い言い方のほうが好まれるんですよ」と言われたこともある。

 

 短い音に情報量の詰まった中国語と、長い音節で繊細な感情表現力を持つ日本語は違うしくみの言語ということもわかってきた。

 

(専門的には、中国語は声調言語、日本語はモーラ言語というらしい。目下勉強中であります。)

 

そのせいなのか、中国語歌詞を日本語歌詞にしようとすると、言いたいことの本質が伝わってこなかったり、日本語の表現がありきたりになる、という現象も起きがちである。そもそもが大変な作業なのだ。

 

とはいえ、本気で"センスの良い日本語の曲"を練り上げてくる場合は話がべつとなってくる。せっかくなので、ここからはこれまでに私が出会った「台湾のアーティストが歌う、推せる日本語歌詞曲」を紹介していく。

 

文学的パンク。Fire EX. 残像モーション

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まずご紹介したいのは、日本のアーティストが作詞を手掛けるパターン。その代表例といえば、当サイトでも何回か取り上げているパンクバンドのFire EX.である。

 

Fire EX.は基本的に台湾語、北京語で歌っているが「残像モーション」「この島の夜明け」「おやすみ台湾」には日本語バージョンがある。

 

とくにHUSKING BEEの磯部正文氏が作詞を手掛ける「残像モーション」は文学的で、邦ロックファンにも刺さる言葉選びだ。

 

涙滲む言の葉舞い散る夜 ざわめく旅路は もう夢遥か

 

Fire EX. (滅火器) 残像モーション 歌詞 - 歌ネットより引用

 

一見難しいことを言っているようだが、聴き手の心の中にはそれぞれの「涙滲む言の葉」「ざわめく旅路」が浮かんでくる。受け取る側の想像の余地を残した日本語詞である。

 

またFire EXへ提供されたもの以外の磯部氏の作品を眺めてみると、一見トリッキーながらも実はかなり味わいの深い当て字のある作品もあり、言葉を使った工夫が散りばめられていて、ばっちりハマっている。

 

ところで、最近のFire EXはおめでたいニュースが続いている。ボーカルSam氏と奥様の山東さんが結婚式を挙げ、ドラムのTi wu氏にはお子さんも誕生した。おめでとうございます!!

 

 

 

ゆるっと聞けるnoovy 

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こちらも日本の方が作詞を手掛けるのパターン。メンバー全員が台湾出身のボーイズバンドnoovy。

 

「LION DANCE」はゆるさのあり気の抜ける言葉運びで子供から大人まで安心して楽しめる雰囲気だ。NHKの教育チャンネルで流れていても違和感がない。

 

なににに をわわわ だるい日々は長い

 You and I weaken our will

壊滅的に 意思がない!

LION DANCE 歌詞【noovy】 | 歌詞検索UtaTen(うたてん)より引用

 

サビの「なににに をわわわ」が覚えやすく、かなり良い仕事をしていると思う。

 

ちなみにLION DANCEは日本語バージョンが先行しているが、公式情報によれば台湾2nd album「SUN」には中国語バージョンも収録されるようだ。このゆるい世界観が中国語ではどのように再現されるか、発売が待ちどおしい。

 

AERAさんで記事になっていましたね。この調子でどんどんメディアに露出しますように!

 

もはや邦楽、ゲシュタルト乙女

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ド例外。ゲシュタルト乙女ことゲシュ。ゲシュがFire EX.ならびにnoovyと異なるところといえば、日本人作詞家によるものではなく本人(Vo&Gt Mikan)名義で歌詞を製作しているところである。

 

何も変わらない
何でも変わった
構わなかった
構わないなんかじゃない

 

ゲシュタルト乙女 三色菫 歌詞&動画視聴 - 歌ネットより引用

 

それでいて「何も」と「何でも」を使い分けるなど表現の豊かな日本語歌詞である。

 

台湾でのライブも見たけれど、その場でのMCはほぼすべて日本語で展開していた。ほとんどが台湾のお客さんにもかかわらずだ。(最近はどうなっているのだろうか…!)

 

あくまで邦楽のバンドとして演出する精神性が私は好きです。

 

関連記事:傷ついた心に寄り添う-ゲシュタルト乙女にインタビュー。

 

リアルな異国情緒、P!SCO

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これが今日の本題。台湾のダンスロックバンドP!SCOの今年の5月にリリースされた「清澈的湖水裡有魚(Qīngchè de húshuǐ lǐ yǒu yú)。めちゃくちゃ面白くないですか。

 

Aメロ→サビまでは台湾語?で(確信が持てないけど、発音から北京語ではないと思う)その後、Cメロに該当する部分で日本語歌詞になるという構成だ。

  

日本語詞はたった一行、

 

「透き通った湖 魚が見える」

 

 この繰り返しである。公式Facebookによれば、ギターのRachel氏が大阪在住の弟さんとともに翻訳し、作り上げたフレーズだそうだ。

 

フル日本語詞ではないということで、(日本語、という意味においては)ゲシュタルト乙女ほど高度ではないし、発音もネイティブレベル…とはいえないかもしれない。

 

だけれども、フル日本語詞の楽曲とはまた違った親しみが持てるのだ。

 

もちろん、これまでの台湾音楽においても、歌詞の一部に日本語が使われている曲は他にもある。それにしても既視感があるなぁ…と思ったら、コレだった。

 

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こちらは、台湾の女性歌手 李嘉 Angie Leeによる「迺夜市(Nǎi yèshì)」。1990年に発売された同名のアルバムに収録されていて途中(1:49~)から「ゆうやけこやけ」のメロディが使われている。

 

(該当部分は日本語の「ゆうやけこやけで~」とも聞こえるが、実は台湾語の歌詞である。)

 

「迺夜市」と「清澈的湖水裡有魚」に共通している点は、日本の要素が入ってくる部分のメロディーがシンプルなところ、あどけなさの残るボーカルの声質。その結果、日本人である私が受け取る印象は現実感のある異国情緒だ。

 

たとえば、旅行で台湾の街を歩いているとふわっと日本語が聞こえてくる。ふと日本語の看板を目にする。そんな光景が目に浮かぶ。

 

「清澈的湖水裡有魚」は、いまの台湾の若手アーティストによる自然体でリアルな異国情緒のあふれる曲だと感じるが、みなさんはいかがでしょう?

 

逆に台湾のリスナーさんたちがどう感じるのかが気になる。ちなみにタイ語バージョンもあるのでぜひ。

 

関連記事:P!SCOの現場に潜入したレポート記事です。

【現地潜入】台湾ロック VS 私の3万円♪ vol.2 -カリスマインディーズバンド"P!SCO"

 

まとめ

今回は台湾のアーティストが歌う日本語曲について書いてみましたが。いかがでしょうか。

 

せっかく記事を書くので、この場では思ったことを率直に申し上げています。「日本語が使われているこんな名曲もあるよ」というご意見・ご感想もどしどしお寄せいただけたら嬉しく思います。

 

それでは、再見!

 

♪すーきー、とぉーった みーっずうみ~~~~

 

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