「得意」を優先し、あたたかな人脈が音楽活動へつながるーサウンドデザイナー・MADさん(MADZINE trio)へインタビュー!

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TEXT By Megumi N

 

皆さんこんにちはー!タピレコです。

 

 今回ご紹介するのは、台湾の高雄市出身のサウンドクリエイターMADさん。

 

 MADさんはこれまでにシンセサイザーで数々の音楽プロジェクトへ参加。アジア各国を巡るほか、国際的にも高い評価を受ける台湾のコンテンポラリーダンスカンパニー雲門舞集(クラウド・ゲート)」の作品「KARMA(振付師:Liu Kuan-hsiang)」等の音楽監修も手掛けています。またアーティスト活動の傍らクリエイター向けのDTM作曲教室を開講するなど、台湾のカルチャーシーンにて幅広くご活躍中です。

 

 さらに近年は日本のシーンとのつながりも濃いものとなっており、2017年には渋谷にスタジオを構えるオンラインのストリーミング番組「DOMMUNE」にも台湾人アーティストとして初となる出演を果たしました。

 

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 ……シールドで牛肉麺が作れそうですな。

 と、そんな冗談はさておき。クリエイターとして華やかな経歴を持ち、そして時に無機質な印象もある電子音楽の世界にいるMADさん。 

 

 そんなMADさんが中心となって結成された「MADZINE trio」の2018年11月の来日ツアーを記念してSkypeインタビューを行ったところ、音楽家としてのこれまでのキャリアアジアツアーの思い出、台湾の電子音楽シーン、そして日本のシーンをどう見ているか?など幅広い話題ついてとても気さくに、そしてざっくばらんにお話を伺うことができましたのでノーカットでお届けしていきます!それでは本編へ。

 

 

Interviewee:MAD

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Profile:サウンドデザイナー、台湾高雄市出身。大学在学時より音楽活動をはじめる。これまで数々の音楽プロジェクトへ参加するほか、国際的にも評価の高い台湾のコンテンポラリーダンスカンパニー「雲門舞集 (クラウド・ゲート)」の作品「KARMA」等の音楽監修を手掛ける。またアーティスト活動の傍ら、クリエイター向けにDTM作曲教室も展開。2017年より参加している「Go Go Machine Orchestra」は台湾のインディーズアーティストを中心に贈られる「第九回(2018年) 金音創作獎 Golden Indie Music Awards」の最優秀現場演出賞へノミネートされる。ソロアルバムの代表作品は「STARMAN RETURNs(2017年発表)」、「MATSU(2018年発表)」等。2018年11月1日~5日に「MADZINE trio 2018 東日本ツアー」として東京・横浜の二都市巡回ツアーを予定している。

 

 

 

ベーシストには向いていないからすぐに辞めた

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ーー当サイトでサウンドクリエイターをお迎えしてのインタビューははじめてのことなので、とてもワクワクしています!まずは音楽活動をはじめられた経緯から伺えますでしょうか。

 

MAD楽器にはじめて触れたのは大学のときのことです。その時はひとまずベースをやってみたんだけど、すぐに辞めてしまいました。ベースに限らず、楽器はやはり筋トレ(基礎練習)が大切なんだけど、それがどうにも性に合ってないと思って…だからピアノも弾けないんです(笑)そこで、筋トレの必要が無いシンセサイザーをはじめたところ没頭しました。ベースよりも、シンセサイザーのほうが性に合っていたんでしょうね。

 

ーー機材はどのようにしてそろえていったのでしょうか。

 

MAD最初はオンラインストアのebayなどで買いそろえていましたが、途中からは友達がシンセ専門のお店をはじめたのでそちらから購入しています。台湾で唯一のシンセサイザー専門店で、Digilog(https://digilog.tw/)というんですよ。

 

ーーこれまでに日本・韓国ツアーも経験されて、アジアを中心に幅広いご活躍をなさっていますが海外に進出することになったキッカケとなる出来事を教えていただけますか。

 

MAD「キッカケ」とはどういう意味?

 

ーー中国語ではええと......「契機」ですね!

 

MADなるほど!ええと、2015年に日本からヒューマンビートボクサーのRyo Fujimotoが台湾へ来てくれたときに友達になって、一緒に日本ツアーをしよう!と約束したことがきっかけです。そこで2015年にFragrance Liangというプロジェクトで日本ツアーに行きました。

 

ーーはじめての日本の印象はいかがでしたか。

 

MADそこで面白かったのが、Ryoがツアーを計画してくれたんだけど、日程が本当にハードで!ちょっとこちらを見て欲しいんですけど…

 

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(Fragrance Liangの2015年の日本ツアースケジュール表)

 

東京の翌日が徳島ってスケジュールがめちゃ過酷でしょう!?もう、Ryoのヤツ…!(笑)と思って。でも良い経験になりました。それから1年に1回は日本へツアーに行っているから、日本ツアーは今年で4回目になります。

 

ーーはじめての日本で、東京、四国、関西、そして最後が高松(四国)とは…かなり回られましたね。

 

MAD確かに日程は厳しかったけれど、日本ではやはり、台湾に好意的でいてくれる人にたくさん出会って…本当に嬉しかった。よく「東京の人は冷たい」と言われるけど、俺にとっては親切に感じました。それから神戸・大阪でもよくしてもらったよ。せっかく大阪まで行ってファミマのたこ焼きを食べたりして、俺はいったい日本に来て何してるんだろうって思ったりもしたけれど(笑)

 

ーーこれまで日本・韓国と海外ツアーで回っておられますが、文化の違いなどでムカついたことはありますか?

 

MAD日本でも韓国でもとてもよくしてもらっているから、ムカついたことは特にないですよ!ただ韓国で面白かったことがあって。韓国のツアーマネージャーの男性とは良い関係で、いつも本当によくしてもらっているんだけど。その方が忙しすぎて、鉄道の駅で4時間待ったこともあって

 

ーーよ、4時間!

 

MAD:でも、台湾の友達と10人くらいで一緒に行動していたからそういう時間も楽しくて、何をするわけでもないけどあっという間に感じましたよ。だって、それも含めてツアーだから。

 

ーー日本から見ると、韓国のインディーズシーンというのはまだあまり知られていないところもあるのですが、MADさんが実際に足を運んでみて「ここは良かった!」と思った音楽スポットはありますか。

 

MAD:ソウルのStrange Fruitというライブバーがおすすめ。機材はどちらかというと古い設備にもかかわらず、どうしてかはわからないけれど、バランスの良い音を聴けるところが良いです。もう、miracleの領域です。

 

「ミュージシャンとしてキャリアを築く」ということ

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ーーこれまでは、音楽家としてどのようにキャリアを築いてこられたのでしょうか。

 

MAD:大学ではずっと英語を専攻していて、その後大学院に行きました。当時在学中から音楽の仕事も増えていったので、大学院は1年でやめて。それ以来音楽の仕事で生計を立てています

 

ーー一般的にこの時代に音楽で生計を立てるのは難しいことと言われていますが、どのような戦略で今日まで歩んでこられましたか?

 

MAD:俺自身ももちろん、音楽ひとすじで生活をすることは難しいとわかっていたから、逆に人の少ないところに行こうと思って。当時台湾ではシンセサイザーやDTMでの作曲というのはどちらかというと新しい文化だったのだけど、周りを見渡してみると、教えられる先生はほとんどいなかったので先生業をはじめました。

 

ーーバランス感覚が良いのですね…。これまでに教えた生徒さんにはどのような方がいらっしゃいますか?

 

MAD台湾のテレビあるいはクラシックの人、もちろんバンドシーンで活躍している教え子たちがいます。それから海外では香港やマカオ、アメリカに住んでる台湾人にもオンラインで教えていますよ。5年間くらいサウンドクリエイターの先生をやっているんだけど、生計が立てられるほかにも別の活動にもつながることがあって。

 

ーーといいますと?

 

MAD:やはり良い人脈が広がって、音楽活動にフィードバックするものがあるということなんですね。

 

たとえば、今回東日本ツアーの「MADZINE trio」も優秀な生徒さんたちと結成したし、またコンテンポラリーダンスカンパニーの「クラウド・ゲート」のサウンドプロデュースにも携わらせてもらったんだけど。それも最初はダンスの専門家の方が音楽を学びたい、とコンタクトしてくれたところから繋がっていって…。

 

ーー人脈がお仕事につながるということで、やはりお人柄もあるのでしょうね。今お話ししていて思うのですが、とても優しく接してくださるもので、逆にこちらがリラックスしてしまうくらいです。

 

MAD:優しい?そうかな…実は、これで優しそうな声に変化させているんです(笑)

 

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(Skypeインタビューの途中、PCの画面を見せて頂きました)

 

ーーなんと!今聞いてるのはMADさんの生に近いお声ではないということですか!?

 

MAD:そうそう、だから、優しく聴こえているのかも(笑)オンラインで教えている生徒さんとオフラインで会った時には「先生の声が違う!」とよく言われているよ。

 

ーー(笑)今後、教室に対するビジョンはありますか?

 

MAD:現代ではインターネットのおかげで、相手と離れたところにいても音楽活動や先生業が続けやすくなったから、3年後くらいには好きなところに引っ越して、作曲活動も続けながら奥さんと暮らすのが目標かな。

 

ハード面の充実もー「先生」から見た台湾のシーン

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ーーアーティスト活動、そして先生としての活動を通してたくさんのミュージシャンの方と関わっているMADさんから見て、おすすめの台湾アーティストはいますか?

 

MADWaves of Dopplerは世界でも通用するサウンドクリエイターだと思う。パソコンでここまでできるなんて本当にすごいなぁといつも尊敬しています。

 

それから、今回ツアーで回るMADZINE trioのパーカッショニストのHai-tingはもともとクラシックをやっていて演奏基礎力も高く、センスがかなり良いです。ドラムセットもグロッケンもこなしてしまうし、器用でクレーバーなサウンドクリエイターです。

 

ーーそれとこれは皆さんにお聞きしているのですが、地元の高雄市でオススメの音楽スポット・レストランなどはありますか。

 

MAD:ライブを見るならParamaunt Barがおすすめです。近くに永來豆漿(Yǒng lái dòujiāng) というお店もあって、そこには小籠包など何でもありますよ。

 

ーーライブ終わりに小籠包なんて素敵です…

 

MAD:日本人は本当に小籠包が好きだね(笑)だから、ライブで来てくれた日本人を永来豆浆まで案内するのが、俺の定番コースですよ。

 

ーー逆に、海外のシーンを見てこられたMADさんの目線から、台湾の音楽シーンについて「もっとこうだったらいいのになぁ」思うところはありますか。

 

MAD:やはり台湾が日本と違うところといえば、いい楽器を作る会社がまだ多いとは言えないところでしょうか。先ほども言った通り、電子音楽はベースなどの楽器に比べればあまり筋肉を使う必要が無いところが長所なのだけど、良い音を出すためには当然のことながら良いハードウェアが必要で。現在の台湾国内では、ハードウェアの選択肢が少ないのが弱点だと思う。

 

ーーカルチャーを支えるハードがあれば良いのにということですね。

 

MAD:そういうこと。ハード面も進化することで、台湾のクリエイターたちがもっと良い音を出せるようになると思う。もちろん、クリエイター自身の努力も重要とはいえね。

 

ーーライブハウスの状況はいかがでしょうか。

 

MAD:現在、ライブハウスはロックミュージシャンが中心となっているから、ボーカルを聴かせる用のスピーカーで、電子音楽に寄ってはいないのかな、と感じています。エレクトロミュージックを流せるような、ダイナミックなスピーカーがあると良いな、と思うんだけど…。

 

ーーよく機材をご覧になっているのですね。

 

MAD:だから日本に行ったときにはとても感動しましたよ!たとえば2017年に渋谷のストリーミング番組、DOMMUNEに出演させてもらったとき、FUNKTION-ONE(ファンクションワン)というすごいスピーカーが何台も並んでいたのを見て「さすがドミューン!!!!」と興奮したよ。

 

それから、Powwowにも出演させてもらったとき、ジェネレックという良いスピーカーの、ショールームみたいなところがあって……

 

ーー機材の話になると止まりませんね…!!

 

MAD:俺に限らず電子音楽のミュージシャンは機材が好きだから、そこを見てしまいますね(笑)

 

台湾にもオリジナルの楽器メーカーがあるといいなぁといつも思っていたんだけど、さきほど紹介した台北のDigilogがモジュラー用のケースを作っているようだから期待しています。もし生産が間に合えば、今回のツアーで持って行けると良いなぁと思っています。

 

ーーちなみに、日本で注目しているアーティストはいますか。

 

MAD:日本ならKenta Hayashiがオススメです。それからバンドなら横浜のPeople Jam。彼女たちとは知り合ってから3年くらいずっと見ているけれど、とにかくレベルアップし続けています。それにKenta HayashiもPeople Jamもよく海外ツアーへ行っていますし、俺自身も日本でとてもお世話になっています。

 

ーー海外の方から改めて日本のシーンについて伺うと「なるほど、海外で評価されているアーティストはこういう方たちなんだなぁ」という新鮮さがあります…!

 

ーー本日は長い時間お話を聞かせて下さり、ありがとうございました!日本ツアーの成功と、今後ますますのご活躍を祈っています!

 

公演情報【MADZINE trio 2018 東日本ツアー】

 

11/1(木) 東京・スーパーデラックス
「Teorema. Tokyo 2018」
開場・開演 17:55
前売:2,500円 / 当日:2,800円(1D別)
出演者:
Live/AV >>Fuyama Yousuke / VELTZ - Analog TV - / MADZINE(solo) / HATAKEN / Squaric / WUUUN / Z_hyper
Visual art >> Geso / Martin Borini (Ailaviu)
Photography Yumiya Saiki / Art by Jantus / Video by S.O.V.O
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布3-1-25 B1F
企画:Teorema

 

11/2(金) 東京・下北沢ろくでもない夜
「DEVILS MEETING vol.3」
開場 18:30/開演 19:00
前売:2,000円 / 当日:2,500円(1D別)
出演者:リビドーと悪魔 / MADZINE trio(台湾、高雄) / NA/DA / El Día Eléctrico(SPAIN) / the FLASHKNOBS
住所:〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-6-5ルイビル3F
企画:リビドーと悪魔

 

11/4(日) 横浜・7th AVENUE
「World Night Moves」
開場・開演 15:00‐
前売:1,000円 / 当日:1,500円
出演者:PeopleJam / Shmu (US Texas) / MADZINE trio(台湾) / El Dia Electrico (Spain) / Flash Knobs /Hello1103 / Sein / Johnnivan / Mars&eye / zazo
DJ:JIK / Task Sebastian /OKB / Chia / yucco! a.k.a テクノ雅之 / All Night Moves Crew
住所:231-0023 横浜市中区山下町252 グランベルヨコハマビルB1
企画: PeopleJam JIK


11/5(月) 横浜・グラスルーツ
「MADZINE from 台湾 Japan Tour with KENTA HAYASHI
LIVE SHOW @ Grassroots Yokohama」
開場 19:00 / 開演 20:00
入場無料
出演者:KENTA HAYASHI / MADZINE trio
〒221-0835 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-13-3 渡辺ビルB1F
企画:KENTA HAYASHI

 

◎前売りチケット予約:各会場へお問合せをお願いいたします
◎お問い合わせ先:madzinetw@gmail.com

 

 

 

【編集後記】

いかがでしょうか。サウンドプロデューサーとして華やかな経歴を持つMADさん。今回のインタビューを通して見えてきたのは、自分の「好き」「得意」を優先する思い切りの良さ、そしてビジネスへ発展させる戦略性、生徒さんたちへの愛情深い目線。それらのすべてがあたたかなお人柄に基づいていることを伺い知ることができ、とても充実したインタビューの1時間をお届けしました。

 

さて、電子音楽がお好きな皆さん。MADさんにぜひ会いたくなった皆さんっ!ぜひ、「MADZINE trio」の東日本ツアーへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

それでは、再見♪