【詳細レポート】台湾ポップス&台湾における日本ポップスの今 ~台湾における台湾と日本の音楽交流の現状~前編

f:id:guguco:20180908163644j:plain

TEXT By Megumi N

Photo by (株)スペースシャワーネットワーク 

 

 

皆さんこんにちはー!タピレコです。 

 

今回は、9月8日に台湾文化センター(東京都港区)にて行われた「台湾ポップス&台湾における日本ポップスの今 ~台湾における台湾と日本の音楽交流の現状~」の講座レポートをお届けします!

 

なんとこの講座。テレビやラジオにて20年以上もの間司会・DJとしてのご経験をお持ちのケン・ウー(中文:吳建恆)さんが来日し、日本からはなかなかとらえにくい「今の台湾ポップスシーン」をとことん語っていただくという台湾文化マニア必聴のお得イベントなのですっっっ!

 

長年メディアにてご活躍されているケン・ウーさん。お話の内容が充実しているばかりではなく、とてもテンポの良い進行でところどころ笑いをさそう場面も。2時間40分間にわたる大ボリュームの講座でしたが、会場は終始和やかな雰囲気で、時間が過ぎるのをあっという間に感じました!

 

このイベントの様子をぜひ!台湾文化がお好きな皆さんとシェアしたく、できるだけ詳しくお伝えしていきます。

 

この記事はこんな方におすすめです。

  • まさに「今」の台湾ポップスシーンを知りたい方
  • 講座が気になっていたけれど、残念ながら行けなかった!惜しいことをした!という方
  • イベント当日の復習をしたい!という方。

  

それではどうぞ!

 

 

 

 

講座概要

講座名:台湾ポップス&台湾における日本ポップスの今 ~台湾における台湾と日本の音楽交流の現状~

開催日時:2018.9.8(土)15:00~17:40(約160分)

開催場所:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター(東京都港区)

ゲスト:吳建恆(ケン・ウー) 氏

進行役:関谷元子 氏

通訳:星原宣子氏

企画制作:(株)スペースシャワーネットワーク

 

【参加者】約80名。男女比率はおおよそ3:7で女性が多めと見受けられた。

 

はじめに:ネット社会で変わる音楽シーン

f:id:guguco:20180908151539j:plain

 

日本でのトークショーははじめてで、こんなにも多くの方に来てもらえるとは思いませんでした。皆さんありがとうございます!皆さんがもし、僕がオーナーをつとめる台北の「Cross Cafe 克勞斯咖啡店」へ遊びに来てくれたら、ここに来ている全員へおごります(笑)

 

日本と台湾の音楽は「人生あるいはストーリーを語る」という点において、音楽のルーツ・DNAが似ています。だからこそ心を動かされ、長い間、聴き続けられるのです。

 

一方K-POPもすばらしいものではありますが、どちらかというと歌や顔も似ており軍隊のような感じですね。ただし(マーケットにおいて)すばらしい戦いをします。

 

現在、台湾の音楽シーンは日本と同様、インターネットにより大きな変化を遂げ多面化しています。

 

各種メディアでは音楽に対し「インターネットで流行している」というかたちでも報道されます。またそのネット社会の中では、良い曲、アーティストを応援している人が増えています。

 

メディアには自分がいいと思ったものをおすすめするという役割がありますが、そのメディアにとっても、インターネット社会においてどの曲がすばらしいかをとらえにくくなっています。

 

私自身もメディアに長くいて自分の番組を持っていますが、今のこの時代に生きて、良いアーティストを知るためにより多くの時間を費やさなければいけなくなっています。

 

まずは台湾ポップスの「今」を象徴する3アーティストをご紹介します。

 

メディアを振り向かせた"草東沒有派對(No Party For Cao Dong)"

www.youtube.com

(前置きが長いのも台湾文化の一つ、とのことだ(笑) 

 

いま、台湾へ中国のポップス(北京発信)が入ってきている。また中国の歴史ドラマも流行している。

 

台湾と中国(北京)のことばの間には、発音が一部異なるところがある(巻き舌の発音など)が、若者たちは歴史ドラマに出てくるような昔の言葉遣いを面白がって真似したり、音楽に反映させたりしている。

 

台湾人がはじめて草東沒有派對の音楽を聞いた時、これまでの台湾ポップスとは異なる歌い方をしているため、北京から来たバンドかな?と思った。とはいえ、草東沒有派對のメンバーたちは北京や中国が好きというわけではなく、自分のやりたい音楽をやって受け入れられるものとなっている。

 

草東沒有派對はライブをこなすたびに動員が増えていった。特に彼らの歌詞というのは、今の若者たちの生活に密着しているものである。また聴き手の受け取り方によって、歌詞は全く違うものとなる。

 

彼らが話題になりはじめた当初、メディアは彼らをピックアップすることはできれば避けたいと思っていた。予算の面でインディーズバンドに枠を割くことは難しかったからだ。

 

そんな彼らをメディアが無視できなくなってきたのは、2017年の金曲賞以降である。 

 

2017年の金曲賞にて、草東沒有派對は五月天 Mayday(以下、Mayday)と同じく最優秀バンド賞にノミネートされた。そこで、彼らはMaydayを抑えて最優秀バンド賞を得ることができた。そして、そのことをMaydayのメンバーも喜んでいた。また「大吹風」にて最優秀歌曲賞をも受賞した。

 

現在の台湾でかなり影響力があり、台湾国内においてはかなりチケットを入手しにくい状況である。また中国のほうでもツアーを回っているが、中国でもチケットが取れない状況となっている。今の台湾の若者が目指すバンドである。

 

台湾語で歌う若手バンド"茄子蛋 (EggPlantEgg)"

www.youtube.com

 

草東沒有派對と正反対のスタイル・異なる世界観を持つバンドである。

  

彼らの1st album「卡通人物」は台湾語で歌われており、今年(2018年度)の金曲賞にて「最優秀台湾語アルバム賞」「最優秀新人賞」を獲得した。

 

「浪子回頭 Back Here Again」は「放蕩息子が帰ってくる」というような内容である。音楽を聞くと、日本っぽい感じと、懐かしい印象を受ける。20代の子(茄子蛋のメンバー)たちが、こういったメロディーを創り出すことができるのは面白いところである。

 

彼らはインターネットを通して音楽を広めていったため、メディアのことを気にしていないしテレビにも出ない。そのため、金曲賞を受賞するまでほとんどメディアでは報道されておらず、関係者が資料を全く持っていないようなバンドであった。

 

しかし、台北の街角で若者たちによくインタビューするとどんなアーティストが好きか?と聞くと、以前からよく名前が挙がっていた。 

 

もしかしたらメディアと今本当に流行しているものとの距離が出来ているのかもしれない。

 

彼らの受賞を見て多くのアーティストたちが、どういう音楽を創ればいいか迷いはじめた。逆に多くの台湾人が、まだバンド結成しはじめるようにもなった。

 

これからの時代を担うバンドの一つである。

 

 

 

ヒップホップグループ "頑童MJ116"

www.youtube.com

 

さて、台湾を代表するグループといえばMaydayである。Maydayはロックブームの時に出てきたバンドで、日本のアーティストとの親交も深い。

 

Maydayのデビューから20年が経過した。今世界のシーンではヒップホップが流行しており、中国・台湾においてもヒップホップ、そしてアニメソングが流行っている。流行と絡めた音楽性をもつグループといえば「頑童MJ116」が挙げられる。

 

頑童MJ116はデビューしてから10年のヒップホップグループで、台湾アリーナで3日間のコンサートをsold outするほどの人気である。(現在のヒップホップブームも少しは関係しているかもしれない。)

 

"MJ116"とは彼らの出身地でもある台北の地名 木柵Muzha (台北動物園、猫空があるところ)とその郵便番号から取られている。 

 

今年の金曲賞では、最優秀グループ賞を獲得している。 Maydayと同じような存在感を放つグループである。

 

台湾におけるCDの状況について

 

日本と同様に、台湾においてもCDのセールスは厳しい状況である。番組の中でCDを送ったりプレゼントしたりするが、視聴者から「CDを流す機械がないので、CDはいらない」と言われる。

 

そのため台湾のレコード会社はMV・PVを作りこむことに力を入れている。リスナーさんへどうしてこの曲を聴くの?と聞くと、PVが感動的だった。と言われることもあり、若いうちに歌詞や音楽自体を楽しむということが無くなっていると感じる。

 

それでも、アルバムを買う方は一定数いる状況である。

 

また音楽のみならず、出版業界も厳しい状況が続いているが実際に本をを手に取ろうとする人もいる。本日も台湾の作家さんが来てくれているので紹介する。

 

張維中さんは日本在住の台湾人作家である。台湾人の目線で本当にたくさんの日本のことを伝えている。

 

またPeter Suさんの本は3冊本を出して10万部売れている。香港、台湾、マレーシアなどで発売されている。台湾のモスバーガーの黒板にはピータースーさんの絵が描いてあるほどである。

 

本当に台湾を知っていただくならば、台湾の作家さんの本もぜひおすすめする。

 

(後編へ続く)

 

▼おすすめ記事:講座でも紹介のあったNo Party For Cao Dongのインタビュー記事です。

ただ好きな人を探す冒険ーサマーソニック出演。No Party For Cao Dong(草東沒有派對)インタビュー!