前回に続き、タピオカこぼれ話の続きをお届けします♪
※タピオカこぼれ話とは?
Tapioca Milk Recordsの筆者がどうして台湾音楽を好きになったのか。そして、なぜブログを設立してまで台湾音楽の紹介をしようと思ったのか?というキッカケや動機、ここに至るまでの歴史をシェアするシリーズです。
前回までのあらすじ
20代前半の私は会社員として時間を消費していた。
いつしかニート時代に熱中したゲームや、台湾PTTのことは目の前のこととしては忘れかけていた。それでも心に刻みこまれた「台湾」の二文字。
私はいつになったら台湾に行けるんだろう?それは誰にもわからなかった。
(寧夏夜市のお店にて。)
タピオカこぼれ話 その4♪上場企業のOLは胃潰瘍で退職をし、LCCで台湾に行った
「フォト、プリーズ!(ドヤッ」
2015年夏、台湾、新北市。淡江高級中学の敷地内。
私はたった一人で、台湾の中学生3人組に写真撮影をお願いしていた。
変な奴だと思われないように、満面の笑みを浮かべて。
しかし、3人ともキョトンしている。
通じないのだろうか。台湾は英語が通じるって聞いたけれど。
(今思えば、発音が悪すぎて通じなかっただけである)
少し時系列が戻るけれど、私はここまでに1回転職を経験していた。そして、その転職先も退職していたのだった。
理由はたくさんあるけれど、わかりやすく言える理由を挙げるとしたらコンプライアンスが全く無視された労働環境と相性が悪かったことと、そこからくるストレスによる胃潰瘍で、つまり社会的には敗北だった。
転職してたった一年後のことだったから、ひょっとしたら決断は速すぎたのかもしれない。転職先はそれなりの企業だったので、周りの大人の中には、ああだこうだと文句を言う人もいた。
でも私は、「ここで踏ん張ったところでまた体を壊すに決まっている。また、意味不明なルールを押し付けられるような環境で、不本意な生活をこれ以上送りたくない」と、退職に踏み切ったのだった。
このようにきっぱりと退職し、数か月療養したところ、体調はどんどん良くなっていった。
体調が良くなるといろいろなことが好転し始めるもので、転職活動にもとりくみ、次の会社もアッサリ決まった。そして、仕事が始まるまで約2か月の空白期間ができた。
「今なら暇だし、前から行ってみたかった台湾に行こう。」
そう決めて、旅費などを調べてみるとかなり安く行けることが分かった。これなら今の貯金額でもなんとかなりそうだ。
一度決めると行動が速いのが私の良いところで、パスポートをさっさと取得し、LCCの旅券とホテルの予約も済ませた。
忘れもしない、早朝のPeach便。機内は東京と実家の最寄り駅を往復する高速バスのように狭く、移動中は決して快適とは言えなかったけれど、「初めての海外旅行!それも念願の台湾!」という高揚感でまったく気にならなかった。
台湾へ入国後、桃園空港で始めて食べた台湾料理はかの有名な「春水堂」の麺とスープである。
なんとなくふわっと、小籠包とか、牛肉麺とかそういう感じかな~?とフィーリングで特に内容を理解せず頼んだらなんとベジタリアン向けのメニューだった。ちゃんと理解せず注文をするとこういうことになる。ちょっと笑った。
さて、今回の旅行でどうしても行きたいところがあった。それは、療養中に台湾の友人におすすめされて見たアジアのトップスター、ジェイ・チョウ監督、かつ主演の台湾映画「不能説的秘密」(言えない秘密)のロケ地でもある淡江高級中学である。
不能説的秘密は2007年公開、時をかける系のラブストーリーなのだけど、ジェイチョウが手掛ける音楽の良さ、映像の美しさ、そしてヒロインの儚さを伴った美しさがすばらしい。
私の一番のお勧めシーンはジェイチョウとピアノ王子の一冊の楽譜を賭けるピアノバトルシーンで、私はこの動画を通算100回は視聴している。今でも大好きな台湾映画の一つだ。
このロケ地であり、ジェイチョウの出身校でもある「淡江高級中学」には台北からアクセスができるという。行かない理由は一つもない。
(MRTからの風景)
台北からMRT淡水信義線に揺られること約40分で淡水の駅に着く。
「淡江中学」と書いたメモだけ持ってそれらしきバスに乗り、隣に座った台湾人男性に片言の英語で「私はここに行きたい。だから、降りるタイミングを教えてください」とお願いした。今思えば無謀である。
しかし、男性はなんとか理解をしてくれた。
しかもそれだけでなく、男性と私の会話を聞いた淡水市民があれも良い、これも良い、ここも見たほうが良い!とたくさんのアドバイスをしてくれた。素敵情報のお礼として日本から持ってきたお菓子を渡すと遠慮するわけでもなく受け取ってくれる。
バスの中での国際交流に興奮し、人の温かさに大感動しきっていたところ、男性がタイミングよく降りるバス停を指示してくれたのだった。
無事バスから降りたところで、道がわからないことに気付く。
「ええっと、ここからどっちに歩いていけば良いんだっけ?」
このように、無謀な行動をすることは私の良いところでもあり、当然悪いところでもある。
それでも何とか、淡江高級中学にたどり着くと、映画で見たものと同じ、美しいヨーロッパ風の校舎が見えた。
ジェイチョウとヒロインが歩いた道。
温暖な国ならではの植物に彩られた風景。
あ~、幸せ!私にとっての幸せとはこのことである。これは絶対に思い出に残したい、と、写真を撮りまくる。部活の休憩中と思わしき中学生に話しかけて写真を撮ってもらう。
淡江高級中学の雰囲気をすっかり堪能し、興奮冷めやらぬ中淡水の街に戻り、お茶を片手にまた散歩をする。
すると、警察署があった。日本の警察署と似ているようでちょっと違う。
ここで警察署の建物を撮影すると、エントランスにいる警察官が近寄ってくる。
もしかしたら、台湾では警察の写真は撮影禁止だったのかもしれない。
注意を受けるのだろうか。
(お父さんお母さんごめんなさい。私は異国の地で警察に注意されます。)と心の中で唱えると、意外にも警察官は笑顔で、スマートフォン片手に何やら言っている。
「e-mail address?」
ナンパであった。(なんとか笑顔でかわした。)
このように、一人ならではの経験もしつつ、台湾旅行の定番の故宮博物院や、小籠包の鼎泰豊、寧夏夜市、またインターネットで大評判のお茶の名店「林華泰茶行」などにも足を運んだ。
初めて見る風景、初めて食べる食べ物、初めての香り。
日本にないもの、日本にもあるもの。
日本より安く買えるもの、日本より高いもの。
日本と同じくらいの値段で買えるけど、日本よりおいしいもの。
現地の人は食べているけど、私はあまり好きじゃないかも?と思ったもの。
「饂飩」はウドンじゃなくてワンタンってこと。
MRTでは飲食しちゃいけないこと。
そして、人のあたたかさ。
仕事をしていない時期に行ったからこそ、心の中に余計な物はなかった。
私は私だけの感覚で、台湾で見たものや現地のルールをたくさんインストールしていった。
今だから言えることだけど、もうこの時点で台湾にほれ込んでいて、やりこみたいと思ったのかもしれない。それは、台湾が親日国だからじゃない。もちろん、それも好きな要素の一つではあるが、それは要素であって理由じゃない。理由はわからないが、私はとにかくこの土地が好き。それだけがはっきりしていた。
何よりも「異国の映画ロケ地にも足を運べるし、楽しめるし幸せになれた」という社会的にはとても小さな、私にとっては大きな成功体験が自信をもたらしていた。
この旅行で得た一連のものが、Tapioca Milk Recordsの原点だと思う。
しかしここから、Tapioca Milk Recordsの開設までまだあと2年半もある。
次のお話は、また病気になる話です(/・ω・)/汗
少し暗い過去になるかもしれないが、避けられないことなので、お話しをさせていただく。
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