Photo by Yoko Hiramatsu
Text by Megumi.N(gu-chan)
皆さんこんにちは。
本日は「世界でもっとも愛されているアジアのライブバンド」ことMONOのライブレビューをお届けします!
と元気に始まったものの、お恥ずかしながらファン歴と思い入れの割にMONOのライブに足を運ぶのははじめて。インターネットで公開されているMONOへのインタビュー記事はすべて熟読していて、特に'Taka' Goto氏の発言に筆者の人生は大きな影響を受けるくらいのファンと自負しているのですが…。
MONOは1999年結成、ノイズとシューゲイズギターを前面に出したインストゥルメンタルロックバンドです。
結成当時の日本には「本当に奏でたい音楽を奏でられる場所がない」―と、2000年に日本を飛び出してアメリカのニューヨークへ渡ります。最初のライブのオーディエンスはわずか5人あまり。でも結成から19年が経った今は、ワールドツアーで10万人以上をも動員するバンドとなりました。公式Webサイトによればイギリスの音楽誌NMEには「This Is Music For The Gods_神の音楽」と賞賛されていたとのこと。
ここでちょっと冷静になりまして…「いや…神の音楽って何だろうな?」と個人的な疑問を持ったんですよ。
その記事の全文を実際に読んだわけではないので深いニュアンスまでははかりかねます、が…NMEの記者さんひょっとして少々盛っているのでは…?と。だって万物に神が宿る日本と異なって、キリスト教圏の神といえば何かと絶対的な存在ですもの…。(私も宗教学に詳しいわけではないけれど。)
皆さんはどのように感じていらっしゃいますか?
ですからこの「神」の正体を突き止めよう!という意味でも意気揚々と会場へ足を運びました。
この日の会場は恵比寿リキッドルーム。envyとの2マンライブです。(余談ですが、過去のインタビューによればMONOとenvyはかつて「薩摩と長州(笑)」くらい仲が悪かったそうです。)
Yoko Hiramatsuさん撮影のライブフォトとともに現場の様子をお届けします。それでは本編へ。
envy x MONO LIQUIDROOM 14th ANNIVERSARY
8th July 2018
東京都内では梅雨も明けすっかり蒸し暑くなったこの日。
会場全体へ「Sushine Recorder(Boards of Canada)」が控えめの音量で掛かる中、客電が落ちたところでステージへメンバーが現れました。赤いスポットライトが3つ、ステージ後方から差しこんでいます。18時13分演奏開始です。
#1
約30秒ほどのイントロからゆっくりと演奏がスタートします。
後ほど確認させていただいたところこのイントロは「ストリングスとトランペットを古いVHSテープで録音したもの」だそう。
その後ギターがインしていき、主題を繰り返しながら発展していくというスタイルです。時間の経過とともに音量も迫力も激しさを増していきます。
ステージを観察しながらこの主題は何を表現しているのかなぁ…?と考えを巡らせたところ、ありていな言い方かもしれませんが、自分の力ではどうしようもない不幸な出来事、すなわち「天災」のようなものがうねりながらステージ側からこちら側へ突進してくるようなイメージを持ちました。
フロアの最後方で見ている私のところまで「天災」が到達して、会場全体へ広がったところでフッと途切れると、オーディエンスからは歓声が飛び交い、MONOの2018年最初となる国内ライブを歓迎しました。
#2 Death in Rebirth (from Requiem For Hell)
2016年にリリースされた9thアルバムより、暗闇の底を彷徨っているような一曲です。テンポがどんどん加速するにつれ、まるでどんどん苦痛に狂っていくような感覚に陥ります。
ギターワークやアクションも激しくなっていき、演奏してる方のメンタルも心配になってしまいます。というか見ている方も辛くなってきます。ちょっとそろそろ許してほしいな、と追い込まれたところで#3へ続きます。
#3
前半はTamakiさんがボーカルを取り、中盤からはTamakiさんとギターがほぼ一緒のメロディラインを奏でます。
「苦しみきった後の祈り」を感じました。心が洗われていく…。
#4
「苦しみ」そして「祈り」を通り過ぎた後の「凪」。オーディエンスもしばし緊張感から解放されます。
今回のライブ公演も折り返し地点。ここでほかのお客さんの反応も見ていたのですが…
本当に人それぞれなんですよ。
身体を横に揺らしてダンスをする音楽好きと思わしき男性。
首をもたげて没頭するオシャレな女性。
両手を掲げる白人男性。
ただステージを見つめて、呆気に取られている大学生くらいのお兄さん。
リズムに合わせて無邪気にハンカチを振っている4〜5歳くらいのお子さん。
今日会場に足を運んだひとりひとりが、誰かの目を気にするわけではなく、ステージを通してMONOの音楽と繋がっているように見えました。
後半からは徐々に明るさを取り戻していきます。ここまでがMONOなりの救いのプロセスなのかな、と思いました。
このまま5曲目でさらに浮上し、さらに日本的なエッセンスをも放つ6曲目"Halcyon"へと続きます。
個人的な感想ですが、Halcyonは本当に素晴らしかったです…。静かで、温かみがある曲なのですが。ぼーっとしていたら、溜め込んでいた感情が濁流になって押し寄せてくる感覚。私もあと少しで感情を持って行かれそうに。
ライブも残すところあとわずかとなり、最後に「Hymn To The Immortal Wind」より彼らの代表曲「Ashes in The Snow」を披露。メンバーが順番にステージアウトしていきます。Tamakiさんがまずはステージ袖へ去っていき、Yodaはガッツポーズを見せてくれました。そして最後に'Taka' Gotoが深々とお辞儀をし、客席へ手を振ってステージをあとにします。
ライブではほとんどMCをしないMONOではありますが、ステージ袖へはけるまでの短い時間にチャーミングな一面をも堪能することができ大満足。会場はノイズと喝采とMONO愛に包まれたまま幕を閉じました。
おわりに
いかがでしょうか?本編でもお伝えしましたように、今回のライブ公演ではセットリストの約半分は新曲が演奏されるという実験的なものとなりました。
私の文章表現力で会場の雰囲気が伝わっているか、少々不安もありますが…少しでもこの感覚が皆さんと共有できましたら幸いです。
さて冒頭で「神の音楽って何でしょうか?」と皆さんへ大きく投げかけた上でライブをかなり堪能したものの、正直なところ「神」の正体はついに突き止められませんでした…。
けれど、本編でも何度か触れているように、今回のライブからは「天災からの救いのプロセス」を感じました。
天災とまでは言わずとも、私たちは普段普通に生活をしているつもりでも、何か運の悪いことに巻き込まれがちです。ですから、知らず知らずのうちに心に鎧をいくつも纏って、身を守ってしまうものだと思います。
これ以上不幸にならないように。
これ以上落ちていかないように。
これ以上何も苦しまないように。
けれども、今回のライブ公演のわずか一時間あまりという短い時間の中で、MONOは奈落の底と救いをすべて包容してくれました。ですから、観ているこちら側としても心のディフェンスをすべて解除した上で、音楽という触媒を通して心の深い部分が繋がるという、稀有な音楽体験が確かにありました。
(ひょっとしたらこの感覚をイギリスでは「神」と呼ぶのかも?)
さて、あなたがこのライブレポートをご覧になっているのはいつごろでしょうか?残念ながら2018年のMONOの国内ライブ公演は今回が最初で最後。7月30日にはシカゴ公演、さらに10月からはヨーロッパツアーが決定しています。MONOは世界を冒険するバンドなのです。
それでも、2019年も日本でその姿を見せてくれることを期待しています。今回のリキッドルーム公演もsold outしていることですし、次回国内で彼らのライブに出会うチャンスがありましたらお見逃しのないようぜひフォローしたいものです。
今回は「世界で一番愛されているアジアのライブバンド」の「世界で一番ゆるいライブレポート」をお送りいたしました。それでは。
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