新人バンド紹介:「Gemini」Caravanity - 越境するJ-ROCKが歌う、社会的な自分ともう一人の青い自分

 

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台湾と日本の間には、それなりの歴史がある。だから、台湾音楽の歌詞の一部として日本語が使われることは珍しくない。とはいえ、DIYで全日本語詞を作り、かつJ-POPの影響で歌うバンドは珍しいし、かなりすごい。

 

観測範囲では、ペトロールズやSpangle call Lilli lineの影響を受け日本語で歌い、ファンベースをコツコツと広げているゲシュタルト乙女に加え、ニューフェイスとして「Caravanity」がいる。ゲシュタルト乙女についてはこれまで何度か言及しているので、今回はCaravanityを紹介する。

 

「Gemini -demo ver.-」Caravanity 
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Caravanityは、2017年結成、2020年に活動をはじめた3人によるJ-ROCKバンド。

 

「邦楽に興味があって日本語の勉強をはじめ、自分も日本語で曲を作り始めました」という台東出身で現在東京在住のギターボーカル、Tomoが作詞、作曲を手掛ける。TomoはBUMP OF CHIKEN、米津玄師をRespectしながらMuseやThe 1975、Two Door Cinema Clubなども守備範囲。そして、凛として時雨を愛聴するギターのJing、台湾インディを聞きつつindigo la EndとHydeも大好きなベーシストJM(ex.「迷幻香菇」→現「樹屋町Tree Neighbor」)は台北在住。


もともとTomoとJMが大学の軽音楽部内で結成された邦楽のコピーバンドで知り合い、「オリジナルがやりたい」と意気投合。そして、JMと昔からの知り合いで、ギターのJingがのちに加入したという経緯で今の形になった。

 

東京と台北にメンバーが分散しているため、普段はオンラインで制作活動が行われる。

 

通常、Tomoがはじめにイントロ、もしくはワンコーラスのデモをGoogle Driveにアップし、イメージを伝えるところから、曲作りが始まる。各々がアイディアを膨らませている間に、一曲分のデモをアップして構成を話し合いつつ、ギターとベースアレンジに取り掛かり、その繰り返しで完成するという。「通話とかじゃなくて全部チャットでやり取りしてるのでめちゃめちゃ時間かかります(笑)」と、Tomoは語る。
 
これまで「Freedom Fighter」(2020年6月)、「レインボーレール」(2020年8月)、そして「Gemini」(2021年3月)の3曲を発表。いずれも2000年代~2010年代の邦楽ロックとボーカロイド・ロックの影響が感じられるラインナップだ。


現時点で最新リリースの「Gemini」は、夏の夕方の香りが漂うさわやかな王道J-ROCK。音楽要素としては、ストリングスを活用したイントロ、少しトリッキーなAメロの落ち感、ギターのリフと掛け合わせるBメロ、抑揚が抑えられたサビ、2サビ前のブリッジなど、邦楽ロックを通ってきた人なら必ず「これ、進研ゼミでやったやつだ…!」と思えるであろう。Base Ball Bearが好きな方には刺さると思う。

 

タイトルの「Gemini」は、日本語で『ふたご座』、初夏の生まれ星座を意味するタイトルが示すように、夏の香りや蒼さを感じることができる。歌詞をよく読むと思春期の自意識のなかで「君」が実態を伴わないようにも思えるが、これについて話を聞いたところ、「Geminiは、社会的な自分と、そんな自分の中の自分の話」とのこと。

 

「社会に適応するために好きなことを好きなだけできなくなって、それでも夢を追いたい自分は心の中のどこかにいます。もう大胆に冒険できない自分と向き合う曲ですね」


デモバージョンでもあることからレコーディング品質には伸びしろを感じるものの、今後新しい要素を取り入れた変化やフルアルバムのリリースに期待感が持てる。「オンラインでの制作という体制なので、できることが結構少ないのですが、アルバムを出したいですね。あとライブがとてつもなくしたいです!」とのこと。越境したJ-ROCKは、これからどう変化していくのだろうか。

 

Information:

Caravanity official website

Facebook:

https://www.facebook.com/caravanity.official

Apple Music:

https://music.apple.com/jp/artist/caravanity/