この記事は「イリ―カオルー オンライントーク&弾き語りイベント」に向けたカウントダウンブログの2日目です。1日目はこちら。
前回、「7月9日開催!イリー・カオルーのオンライン弾き語りライブがあるよー!」では、イベントの概要とイリ―・カオルーのプロフィールについて簡単に紹介しました。
今回は、彼女の3rdアルバム『尋找你 Longing』のインスピレーションの元になった同名の短編小説集を紹介します。
なお、音楽アルバムと小説のセットは、こちらの公式ホームページから購入できます。
(出典元:https://www.facebook.com/ilidkaolo/)
「音楽が記憶をたぐりよせる。
ほら、わたしたち実はあのとき、あの場所で出会ってた」
そんなキャッチコピーを掲げる本作、『尋找你 Longing』は、Lily Jones氏による64Pの短編小説集です。
収録作品と各テーマは、
- 本に挟まれた一通の手紙:青春の衝動に突き動かされて書いた一通の手紙、そして喪失
- 女人島:アミ族に伝承される神話
- 十七歳のあなた:日本統治時代、第二次世界大戦の中で船員として南太平洋に沈んだ、実在した台湾の青年
小説集の著者で、イリー・カオルーの親友のような存在というLily Jones氏は、
「探索者である私はイリ―の潜在意識の下にあるイメージ領域を開き、タイムマシンで太古の人類が生きた時代まで遡って、過ぎ去りし美しい生活を観てきました」
(「尋找你」日本語版より引用)
と語ります。
「探索者である私は~」ってなんかもう既にその関係性がうらやましい感じがするんですけど、大丈夫ですかね?
とにかく、そんな関係性から生まれた3つの作品の世界は、栖木ひかりさんによる日本語翻訳を通し、触れることができます。
Lily Jonesが描く「人の存在感」は、少ない言葉でも、ふわっと情景が思い浮かぶため、読んですぐに心がどこかに行ってしまいそうになりました。
特に1作目、「本に挟まれた一通の手紙」では、とある(おそらく)少数民族出身の女の子の視点を軸に物語が展開しますが、同じ「彼」を取り巻く世界の描写の中でも、太陽のような光と、海の中の珊瑚の世界を通した美しさと、会社での現実的、そして夢の世界の中での存在感が少ない言葉で、でもそれぞれ違って書かれていて、表現の幅を感じました。
人は現実を生きて大人になっていくのに、たった一人特別な存在と出会ってしまうことで、最初に出会ったときの感覚がバグのように何回も再生され、そのたびに特別になっていくのに決して「現実」を分かち合うことは出来ない人もいる、そしてそれがすべて自分の衝動の中にあるのかもしれないという諦念を、「本に挟まれた一通の手紙」を通して体験できました。
2作目、「女人島」は少し不思議で、心に沁みました。 アミ族の神話が基になっていて、未知の世界へ漕ぎ出す様子が描かれているという本作は、ファンタジーな雰囲気かと思って読み進めてみれば、太古の世界に生きる女性たちの、神秘的な雰囲気を纏いながら、少しだけ風変わりに感じる日常が書かれている作品でした。物語の終わり方は力強く希望を感じさせるもので、かといって男性的な筋肉質なものではなく、どこまでも女性が本来持つやさしさが宿った作品でした。
「17歳のあなた」は、実話を基にして書かれたもので、日本統治時代を生き、戦争の中で船員として最期を迎えた台湾人青年の半生と最期について、いまを生きる一人の女の子が探索する物語。
おそらく1980年代、戒厳令が解かれる直前に青春時代を過ごした彼女は、街中や学校で語られる歴史、ひいては自らのルーツに少し違和感を持ちながら、ふとしたきっかけで聞いた祖母の話を手掛かりに、大叔父のルーツを、日常の中で少しずつ辿っていきます。日本についての描写はやはり痛みと共に受け止めたけれど、現実的かつ優しい語り口で、気分は沈まずに世界観に入ることができました。山鬼山丸、ググっちゃったもん。
3作品とも形を変えて、「海」が描かれていて、それぞれの美しさがあると思います。コロナ禍が日常になるなかで、少しだけ異世界に意識を旅行させたくなったら、ぜひ読んでみてくださいね。
というわけで今日はここまで。明日は…明日は何を書こう。仕事をしながら考えることにします。
それではまた。
本作品にまつわるトーク、ライブイベントはこちらから無料で申し込みができます。
『台湾金曲奨受賞のIlid Kaoloによる最新アルバム制作秘話トーク&弾き語りライブ』
日時:2021年7月9日(金)20:00~21:00
場所:Zoomウェビナー 無料参加
申し込みURL(無料):https://hibikiculture-ilidkaolo0709.peatix.com/