3月19日(木)発売のミュージック・マガジン4月号にて、台湾音楽の大型特集が掲載され、SNS等で話題になりました。
さて、こちらTapioca Milk Recordsは、台湾と不思議なつながりのある筆者が、台湾の音楽についてマイペースに発信する媒体です。
今回は「3月に台湾インディーズシーンからリリースされたYoutube動画」を軸に、MV/Live Video/その他についてゆるく紹介します。
さまざまな音楽性からピックアップしましたので、ぜひお好きなものを見つけてくださいませ!
現在、新型コロナウイルスの影響により、全世界で水際対策が強化され、外出を自粛するなどの対策が呼びかけられています。当記事はそういった中でも、ご自宅から台湾の最新のカルチャーを身近に感じたり、安全に楽しんだりすることを目的とし公開致しました(筆者より)
- 人們來了 People Coming - 無妄合作社 No-nonsense Collective
- 系統測試 - Live streaming 草東沒有派對 No Party For Cao Dong
- SPIT- 20200307 @ PIPE LIVE MUSIC
- Take Five - Alto Saxophone Cover【KT COVER ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶】
- 幸運の涙 7inch trailer - EVERFOR
- 《PORTAL》 ALBUM PREVIEW - 渣泥 ZANI
- 餵飽豬 - Live@20200301 大仁號
- 台湾インディーズ関連トピック
- おしらせ「ミュージック・マガジンに載らなかった台湾の100枚」
人們來了 People Coming - 無妄合作社 No-nonsense Collective
無妄合作社 No-nonsense Collectiveは、2016年に、台湾のアンダーグラウンドシーンを形成するバンドマンのグループ『愁城』の謝碩元(Bass&Vocal)、郭力瑋(Gt&Vocal)を中心に結成したバンドです。
台北市内にある拠点はこんな感じです。以前友人の紹介で、遊びに行ったときは地下でフリーマーケットをしていて楽しそうでしたー。
結成の経緯:
元々、別々のバンドで活動していた郭力瑋と謝碩元は、18歳の時にインターネットの出会いをきっかけに仲良くなりました。
それぞれのバンドが活動を休止した後、郭さんがOPENしたコーヒーショップで仲間たちと集まるのが日常に。そしてある日、いつものようにギターを持ち寄りジャムセッションをしていた2人はどちらからともなく突然こう言いましたー「もう一度バンドをやろう」。これが無妄合作社のはじまりだった、とのこと。
これまで何度かのメンバーチェンジがあり、台湾東部の台東を拠点とする台湾原住民アミ族の家族によるサイケバンド「漂流出口」の林肯がドラマーとして参加していた時は、台北と台東を行ったり来たりしながら作品作りをしていたとのこと。
今回Pickupした『人們來了 People coming』は、そんな無妄合作社が2019年にリリースしたアルバム「二十一世紀的破青年」のラスト、8曲目に収録。
今回特別に、本稿のためにGt&Vocalの郭力瑋さんにオンラインでインタビューが実現したので紹介します!
ーー無妄合作社は、台北のライブハウスThe Wallもsold outするほど人気のバンドって聞きました。歌詞には「人們(人々)」「他們(彼ら)」と繰り返し出てきますが、具体的に誰のことを言っているのでしょうか?創作のインスピレーションはどこから?
郭力瑋:『人們來了』を一言で言うと、これまでの人生で出会ったり、離れていった人たちと一緒に過ごした、美しい時間について歌った曲です。
「人們(=人々)」とはライブで出会った人々のことです。「他們(=彼ら)」とは、ライブハウスの外で、地べたに座って円になって、一緒にお酒を飲む親友たちや、ちょっとした知り合いや、まだそんなに知らない人たちのことを言います。ふらっと来て、ふらっと離れていくような関係性っていうか。
(from YouTube)
そんな関係性は、ライブハウスでの出会いに限りません。
これまで、誰もが私の人生に現れて、去って行ったと言えます。
お酒を飲んでいるときに「他們」と話したことは、飲みすぎて記憶を失うとほとんど覚えていませんが、一緒に過ごした時間の儚い美しさは、記憶に残り続けます。たとえ目覚めたとき、「他們」がいなくなっていたとしても。 この感覚を曲にしたのですよ。
ーー思っていたよりも深かった。MVの前半は、台北での飾らない…というか...やんちゃ寄りの日常がローファイな画質で次々と流れてくるんだけど、特別な意味はある?
郭力瑋:この動画は、子供の頃からの悪友たちが酔っぱらって、バカ騒ぎをしたことを自分の携帯で撮影して、後日また皆で集まったときにパソコンで上映会をしたらすごい面白かったんですよ。そんな思い出の動画を前半に入れました。
(from YouTube)
ーーありがとうございます。創作活動をする上で、影響を受けたミュージシャンや、アルバムは?
郭力瑋:特別に尊敬しているミュージシャンや、参考にしているアルバムはないけれど、いつも伍佰を聴いていますよ!
ーーこの記事を見て、はじめて無妄合作社を知る日本の方へ一言お願いします!
郭力瑋:無妄合作社を好きになってくれる日本の方がいるのかわからないけれど、もしもいたら、日本で一度ライブをして会ってみたいです。
ーー日本では台北のアンダーグラウンドシーンについて情報をキャッチするのは結構むずかしいんですよー。今度は直接お話できたら良いですね!
(翻訳協力:ケニーさん/逆瓣膜 COUNTERVALVE)
系統測試 - Live streaming 草東沒有派對 No Party For Cao Dong
公開日:3月6日
ジャンル:オルタナ、グランジ、スタジオライブ、火鍋、具材はバナナ
3月6日(金)、台北時間20時(日本時間21時)より、台湾で高い人気のあるオルタナティブロックバンド、草東沒有派對 No Party For Cao DongがYoutubeにてライブストリーミングを行いました。
その内容は、スタジオライブと同時進行でバンドの前方に設けられた火鍋がはじまり、食事の内容や展開は視聴者による選択肢への投票で決まっていく、という斬新な遊びと同時進行。
(From YouTube)
台湾の若い世代の怒り、焦り、寂しさ…などネガティブな感情を吐き捨てるオルタナティブロックをベースに、two door cinema clubの影響を感じさせるエレクトロポップの要素も巧みに取り入れています。
以前日本の好きなアーティストっています?と聞いたところ、サカナクション、マキシマムザホルモン、椎名林檎、toeなどを挙げてくれました。
いつものライブは歌ありなのですが、今回はインストライブで新鮮。最後の曲(20:20~)は「大風吹」で、ライブでオーディエンスと合唱する定番の曲です。次の来日公演に備えてぜひ歌えるようになっておこう!
20分間ありますので、この週末にぜひゆっくりご覧ください。
個人的には、ドラムのFan Tsaiちゃんの髪の毛がファー!ってなるところが好き!!(ファン目線)
※ちなみにこちらの動画は非公式のコピーで公式版は現在非公開です。でも広めたいから紹介しちゃう!☆(・ω<)
SPIT- 20200307 @ PIPE LIVE MUSIC
公開日:3月14日
ジャンル:ハードコア、ライブ動画
SPITは、2019年に台北にて結成したハードコアバンドです。NANA(←漫画の方)の登場人物:大崎ナナのように華のあるボーカル、TINAさんはまだ19歳。高校を卒業したばかりのパンク大好き少女だそう。
この3月7日に台北のライブハウス、PIPE Live Musicにて行われたライブの様子です。
ギタリストの張盛文は、数年前に日本のタワレコでも展開していたオルタナバンド、透明雑誌のメンバーのひとり。現地からは「オルタナっぽいハードコアを想像して聞いてみたら、ゴリゴリの80'sハードコアでした」とのコメントも。
2月に日本のTwitterで微バズりし、欧米発のアジア音楽メディア「UNITE ASIA」にも取り上げられるなど、海外から注目も集めています。
「SPIT」
— 新 道 (@F_Shindou) February 1, 2020
ex.透明雑誌やSelfishsuckerのメンバーとかが集まって2019年に結成されたハードコア〜ノイズコアバンド。
ボーカルはまだ10代の女の子ですが、演奏陣は流石の安定感。
台北パンクシーンの核となる共犯結構の活動が最近少ない分、こういう新しいバンドでなんとか盛り上げたいね。 pic.twitter.com/GnoJ4aQ6Sa
Take Five - Alto Saxophone Cover【KT COVER ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶】
公開日:3月5日
ジャンル:ジャズ、カバー動画、ベースでTake5٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
先月もpick upした、大象體操 Elephant Gymのベーシスト、KT Changによる「Take Five」のアルトサックスパートをベースでcoverする動画です。
Dave Brubeckの音源2つをtransferするセンスや運指のテクニック、音作りに、Youtubeのコメント欄には台湾国内外から絶賛のコメントが寄せられています。
よく見たらアルトサックスのパート以外もカバーしてるし(1:44-1:48)、芸が細かいー。
٩(๑❛ᴗ❛๑)۶今月もご馳走さまでした٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
大象體操 Elephant Gymについてもっと詳しく知りたい方は、Qetic掲載の「来日前インタビュー 日本・アメリカ・故郷への想い」も併せてご覧ください(私が書いてますー!)
幸運の涙 7inch trailer - EVERFOR
公開日:3月15日
ジャンル:シティポップから好きなところを好きな分だけ/トレーラー
「雀斑freckles」のギタリスト、蘇偉安(スー・ウェイアン)によるプロジェクト、EVERFOR(エバーフォー)。4月22日発売予定のEPからトレーラーが公開されましたー。
作品のタイトルは日本語で「幸運の涙」、トレーラーの歌詞も日本語訳がついていますので是非に見てみて下さいー。
Big Romantic Recordsのオウンドメディアによるインタビューでは、メンバーたちは神秘的、幻想的な雰囲気が好きで、オタク気質があると語っています。そして、今、日本でも台湾でもシティポップの音楽性が流行していますが、シティポップを形成する要素のひとつひとつが台湾人の生活に溶け込んでいるとのことです。
「力まずにやれるのが一番」と語る彼らが作る80sサウンドは、リラックスしていてロマンチックな雰囲気が満載。
「あなたを見た衝動 僕に気付かせる
宇宙にいるみたいだ」(引用元:Youtube「EVERFOR / 幸運の涙 7inch trailer」より)
筆者は日本語があると日本語を読んじゃうのですが、短い言葉から色々伝わってきて、共感が生まれる感じがすごくあります。ろまんちーっく。
楽曲から感じる80sの世界観の魅力を高めるアートワークは日本横浜生まれの台湾人イラストレーター、Shiho Soさんによるものです。
大好きな台湾バンド「EVERFOR」の新アルバム「幸運の涙」のアートワークとデザインを担当しました。 RT
— Shiho So (@so_shiho) March 15, 2020
自從聽甜蜜的房間就愛上EVERFOR,很高興可以幫他們設計「幸運淚」專輯封面。
発売日は4月22日。HOLIDAY!RECORDSから予約を受け付けているのでぜひ!
予約解禁!台湾シティポップ雀斑Frecklesのメンバーの別プロジェクトEVERFORの新作7インチ!
— HOLIDAY! RECORDS (@holiday_distro) March 17, 2020
夏を先取りした感じの、甘くとろけそうなチルなラヴァーズロックとシティポップの2曲入り。
あとこれジャケットが最高では。
【4/22発売・予約】EVERFOR / 幸運の涙
¥ 1,980 税込 https://t.co/wSyH8zQyNK pic.twitter.com/6ZD3Ym8Emf
《PORTAL》 ALBUM PREVIEW - 渣泥 ZANI
公開日:3月23日
ジャンル:トレーラー、アルバムトレーラー、シティポップ、電子音楽
2018年にリリースした1stEP「半心」が好評を博し、Mayday主催のフェスにも出演するなど注目のR&B+シティポップ、渣泥 ZANI。
3月27日に各種ストリーミングにて、2年ぶりの新作であるアルバム「PORTAL」をリリースしました!(フィジカル版の発売は4月1日。欲しい!!!)Youtubeにて全曲のトレーラーを視聴できます。
TAIWAN BEATSのレコメンドによると「水曜日のカンパネラとかMONDO GROSSOが好きな人はぜひ」とのこと。
1st EP半心時代に発揮したROXIのボーカルの力強さはそのままに、感情を抑えたクールな表現で。サウンド面はより電子音楽に変化しています。
そしてMVの世界観も、2年前の生っぽい感じからエレクトロニックな世界観への作り込みへと進化しています。私は、台湾ポップスが好きな方にも刺さるのでは?と感じます。
Spotifyなど各種ストリーミングで展開していますので是非。
※KKBOX、Apple Musicでも展開中!
ZANIのプロフィールついて興味がある方は「進化系シティポップがお好きならば台湾の「ZANI」には置いて行かれないべき」をチェック!
餵飽豬 - Live@20200301 大仁號
公開日:3月4日
ジャンル:イベントの動画(ライブ)、パンク、船上ライブ、淡水
3月1日に、観光名所としても栄える「淡水漁人碼頭」にて行われた大仁號というイベントの様子です。
(淡水漁人碼頭はこんな雰囲気です)
大仁號は、2015年7月25日に台湾のグランジバンド 逆瓣膜 COUNTERVALVEのベーシスト、ケニーさんのお誕生日企画としてはじまりました。初開催時にはブレイク前の草東沒有派對も出演。
3回目の開催となる今年は、1つの船に2つのステージを設け、Band stageに逆瓣膜 COUNTERVALVE、餵飽豬 FeedPigs、Solo stageには葫蘆會、鄭光顯 (fr.非人物種 Inhuman)の計4アーティストが出演。
動画は餵飽豬 FeedPigsのライブの様子です。開始30秒でダイブがはじまっていてすごい、みんな楽しそう!
そして主催のケニーさんのバンド、COUNTERVALVEはの動画はインスタにアップされています。こちらも要チェック!
(photo by Leon's Photography × 周愚民)
台湾インディーズ関連トピック
ミュージック・マガジン4月号「台湾音楽の30年特集」
3月19日発売。
日本の音楽雑誌、ミュージックマガジンに「台湾音楽の30年」特集が26ページにわたり掲載されています。ミュージシャン、音楽関係者へのインタビュー、台湾インディーズディスクガイド、メインストリームのアーティストの紹介など充実の内容です。
内容をこちらにまとめていますので是非ご覧ください。
草東沒有派對、台湾アリーナ公演中止
コロナウイルスの影響で、日本のみならず台湾でも中止、延期となるイベント、音楽フェスティバルが増えています。
3月8日、草東沒有派對の公式Facebookにて、5月に行われる予定だった台北アリーナ公演が中止となることが発表されました(アリーナ公演を計画していたこともここで発表となりました)
台北アリーナは台湾で最大級規模の会場です。今回のアリーナ公演がもし実現していれば、バンドが本格始動後5年で掴んだ大舞台でした。
草東のTourはこれまで台北Legacyなどキャパ1000人規模のライブハウスで行われていましたが、毎回チケットが買えないほどの人気。多くのファンが見られるはずの公演が中止になりましたこと、残念に思います。
そして本稿でもご紹介したライブストリーミング「系統測視」は、中止発表の2日前、3月6日に行われました。
ストリーミング配信日には、中止が決定するかそれに近い状況だったと推測しますが、不安定な状況のなかでライブ配信をしてくれるところ、やっぱり好きだなー…と、思ってしまうのでした。
おしらせ「ミュージック・マガジンに載らなかった台湾の100枚」
Tapioca Milk Recordsでは4月18日まで、「ミュージック・マガジンに載らなかった台湾音楽の100枚」として、インディーズ/メインストリームに限定せず、読者の皆様からのおすすめアルバム投稿をお待ちしております。ご興味のある方はぜひご参加下さい!