「よく訓練された台湾ライター」になるために色々考えてみた話

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どうもです。

 

最近身の回りで話題になっていた「台湾ライター」問題について書いてみます。

 

きっと「台湾への理解がー!」とか、「ここの掘り下げが甘い!」とか、色んなご感想をいただくんだろうなと思ってます。

 

そんな声に育ててもらってきたと思ってるので、沢山ください!とお伝えすると共に、市場の隅っこで台湾を発信してきた側の人間として、発信側の事情に触れつつ、個人的な想いを少し話しておきたいな、と。

 

因みに、「特定の!!誰々がー!!」みたいな話は好きじゃないし、しないつもり。というわけで、どなたも安心して読んでいってくださいー。

 

 

そもそも台湾ライターって何なの?

→台湾をテーマに、メディアで文章を書いて発表している人!

 

ザックリいうと、「台湾について文章を発表して、発表している人の総称」です。テーマは、政治、流行、観光、グルメ、ライフスタイル、音楽とか。

 

台湾をテーマとする書き手の分類

 

専門分野あり

専門分野なし

扱うテーマで生計を立てている

大学の先生

新聞記者

総合ライター

扱うテーマで生計を立てていない

(副業)台湾〇〇ライター

(副業)台湾〇〇ブロガー

総合ブロガー

 

「専門分野のある・なし」×「扱うテーマで生計を立てている・いない」ざっくり分けてみました。アート方面(小説家や詩を書く方々)は除外しています。

 

私の観測範囲では、「台湾ライター」として批判を受けることがあるのは、左上のマスにあてはまらない方以外大体全部。

 

補足1:

一人の人が、上記の表では二つの顔を持つこともある。たとえば新聞記者の方が、「台北B級グルメぶらり食べ歩き日記」をプライベートでつづることもあるだろう。※例え話です!笑

 

補足2:

台湾についてさまざまなテーマを扱う「総合ブロガー」。数年前はブログ一本で生計を立てている方もいたようですが、コロナ情勢下による観光情報へのアクセス減少&グーグルアルゴリズムの変動という外的要因でピボットしている印象。

 

んで、台湾ライター問題ってなに

=書き手が、その成果物に対して批判を受けること。

 

批判の種類は主に3種類ある。

 

(1)テーマに対する批判

「台湾の私の好きな〇〇が取り上げられてない!」「台湾の〇〇な面ばかり取り上げられている!」がコレ。

 

メディア(あるいは企業)から発注されている書き手は、企画会議を経て記事が表に出ているのですが、なぜか末端にいるライターが批判されてしまうという現象です。リスク高いか。

 

この批判は、大抵、読み手側に好きなものや伝えたいことがあって、それが表に出ない…!というフラストレーションからくると思っています。

 

余談だけど、私もかつて、「なんで〇〇が取り上げられていないんじゃ~!」サイドだったので、気持ちがすごくよくわかる。

 

(2)内容の誤りに対する批判

誤った内容の記事が発信され、批判を受けることもある。

極端な例では、「台湾の公用語は台湾語~」とか、公開日時点で既に閉店したお店の情報が発信されてしまっていること。

 

ライター/編集者が、台湾への理解不足による悪意のないやらかし、もしくはファクトチェックが甘いことが原因。

 

(3)情報の浅さに対する批判

浅い情報がメディアの記事として掲載されてしまうことに対する批判。

「浅い」の定義は主観によるもの。「台湾について今知りました!みたいな読み手にはありがたく、台湾を知っている人にとっては意味のない情報」だと私は思っている。

 

浅い記事が表に出てしまう原因は2つある。

 

1つは、「浅い記事で集客できた時代」の影響。今から数年前、Google検索では、浅い記事も特定の要件を満たせば検索上位に上がりやすかった。それらはノウハウとして蓄積され、Web媒体やブロガーは、検索に上がりやすい記事の傾向を、技術的にハックして記事を量産していた。その頃の文化が特にWebでは残っている。

 

2つ目は、誰でもメディアをつくれる時代になったから。具体的には、Wordpressに代表されるCMS×デザイン力で、法人と個人が同じ条件でメディア風のきれいなサイトが作れるようになった。

 

結果、編集体制がしっかりしていない仕組みによってつくられた記事も世に出ることになり、「悪気のないやらかし」的な記事が加速してしまった、というワケです。

 

本来大きく責任やクオリティを問われないはず(フツーにそっとされてていいはず)の個人ブロガーも批判を受けるようになった原因もこのあたりにあるのかな…?と思っております。

 

「台湾ライター」はこれからもなくならない

 

一つちゃんと伝えておきたいのは、台湾ライターはいなくならないし、台湾ライター問題もこれからもなくならない、ということです。コロナで減速しているとはいえ、国際交流は今後も増えていくでしょう。


ただ、書き手に求められる役割は変化していく。

これまでの「台湾ライター」の役割には3つあります。情報発信量の担保、台湾文化への理解醸成、顧客エンゲージメントの創出。
 
で、読み手のリテラシー向上とGoogleアルゴリズムの変化によって、量産役としての台湾ライターの役割はやや下がる。代わりに、顧客エンゲージメントの創出がますます重要になっていく。顧客エンゲージメントを高めるためには、成果物や発信元への信頼度が高いことが重要で、信頼度を高めるためには、台湾文化への理解をしっかり促していく必要がある。

 
今、台湾に興味を持っている人は、台湾の魅力が日本にもっと広まっている環境を多かれ少なかれ願っているでしょう。少なくとも、「今より減っていい」と思っている人は少ないはず。

 

より多くの方が、台湾に興味を持ってもらえる状況を作るには、プレイヤーは1人だけでは成り立たないわけで。こと書き手の世界では、良いプレイヤーの創出と、プレイヤー自身のスキル向上が必要になってくる。

 

台湾への基礎知識、テーマへの理解、書く人としてのスキルの3つを備えた、「よく訓練された台湾ライター」がたくさんいる状況が面白い、と私は思う。

 
そのために今必要なのは、「書き手」と「読み手」の世界が分かれることではなく、歩み寄りかな、って思います。

 

たとえば、読み手からすれば薄っぺらい記事を書いてるように見えるライターも、単に知識不足で本当はとても情報を欲していて、濃い記事を書きたいかもしれない。

 

テーマが偏っているように見えるライターも、他の見せ方を知らないだけかもしれない。
(あとは、表に出ていないだけで別の切り口で企画を検討しているかもしれない)

 

思い通りにならない状況を、個人攻撃に変えるのではなく、一旦受け入れる。で、やりたい人が、負担にならない範囲で想定されるアプローチをとって、ちょっとずつよくしていく。みたいな状況になったら面白いんじゃないですかね?

 

対話と根回しで、なんとかなることが本当はたくさんあるんじゃないか。周りを見ていてそう思います。

 

「よく訓練された台湾ライター」を増やすために

というわけで、台湾にまつわる情報発信で面白い世界をつくっていくには、何かしら価値を生み出す方向性の打ち手が必要で。今考えられることを、よく言われることも含め4つ挙げます。

 

運営元に働きかける

主に、記事に書いてある内容が誤っている場合に有効。編集側、あるいはメディア運営側にとって誤った情報を掲載することは「恥」なので、Webなら即日訂正、紙の場合も何らかの対応を取ってもらえる場合が多い。

 

その結果はライターさんにフィードバックされ、今後に活きるかもしれない。

 

自分で書く

一般的に言われる方法。「自分で書く」。書き手側も、批判するなら自分でやってみればいいのに…と思っている人が多いかもしれない。そして実際に、文章を書くのが好きなら良い方法だと思う。

 

Webメディアの場合、原稿料は5,000円〜30,000円くらい。雑誌だとページ数にもよるがもうちょい高い(はず。)

 

速さを重視する場合には、ブログで書くという手もあるし、有料noteで記事を売るという手もある。拡散力に課題がある場合には、Web広告を1日数百円~出稿できるので、挑戦できる資金が手元にあるならTwitter広告を検討しても良いかもしれない。

 

とはいえ、全員が全員、文字を書くのが得意なわけではないので、最良とは言えない。

 

書く以外の発信方法を検討する


写真、動画、DJ、ラジオなど、書く以外の発信方法ももちろん考えられるであろう。

 

お金になるかは交渉とクオリティ次第だけど、手法やデリバリーの方法はあふれている。一方でそれなりの工数がかかるので、そもそも発信する前に心が折れてしまう場合や、発信する前に内容が陳腐化してしまう可能性もある。

ネタを提供する

意外と盲点だけどこれも結構アリ。クリエイティブな作業が苦手な方にオススメ。

連絡先を公開しているライターさんに、「台湾でこういうことが面白いと思っているので、取材したら面白いですよ。自分はこういう立場なので、取材協力できます。書いてみませんか?」と丁寧に提案して回る。すると、ライターさんが編集部に上げて、取材+記事化するかもしれない。

 

メリットはネタさえ提供して、諸々手配すれば記事をまとめるのはライターさんがやってくれること。デメリットは、自分の思うような記事にならない可能性ももちろんあること。

 

実は、私は本業で広報の仕事をしている(台湾は全く関係ない)。ネタの提供を通して120%自分が満足する記事ができたことは、ほんの一握りだ。他社にポジションを取られたり、理想の切り口にならなかったり…。そんなリスクがあっても良いなら、取り組む価値はあるかもしれない。

 

もし、120%自分の思い通りに記事を作ってほしいなら、広告主になることが必要で、大体数十万円くらいの費用が必要となる。

 

 

補足:SNSでの議論について

 

私は、台湾ライターの成果物について、Twitterで議論したり、指摘したりすることを止めるつもりはない。(人のアカウントはその人のものだ)

 

でも、議論をする際に、紳士的な対応を取れる人、取ろうとしている人、そして器用に思いを伝えられる方はどれほどいるだろうか。私自身、SNSで衝動的に問題提起をして「言ってよかったー!スッキリ!」と思ったことは実はそんなにない。

 

だから、一見遠回りに見えても、自分で作ったり、作れない人はコミュニケーションで解決していく方法が大人の対応かつ平和かな…と思ってしまう。

 

書き手のひとりとして

ここからは自分語りです。私自身については、Tapioca Milk Recordsの管理人あるいはライターとして、台湾のインディーズ音楽について書く人+企画を立てる人、として認知していただいている方が多いと思います。

 

いろんな方にお世話になって発信を続けてきた一方で、台湾インディーズ音楽の情報を新しいやり方で市場に供給してきたことは、誇りに思っている。…そんな自分語りが嫌いな人はここで読むのをやめましょうw

 

台湾ミュージックについて書き始めたのは3年前。台湾の某バンドにはまったときに、日本語で読める情報が全くなかったことに対し、小さな疑問と怒りを覚えました。「こんなにいいバンドの情報がないっておかしくない?みんな(=仮想敵)なにやってるの!!」と思っていた。

 

で、情報を発信していくうちに、仮想敵なんていない、と気づいた。

 

欲しい情報や発信があって当たり前、というのはお花畑的な発想だった。

 

自分が抱えていたリスナーとしてのペイン、音楽レーベルの抱えるペイン、台湾のマーケティングサイドが抱えるペインなどがちょっとずつ見えてきて、そこに一石投じられないか、マーケットに微力でも貢献できないか、との思いで、少しずつ発信をしてきました。

 

音楽業界やメディア業界に入ることも、台湾企業に入ることもなく。「誰にも忖度しなくていいからできること」をテーマに、自分の頭で考えて色々やってきたことが、Tapioca Milk Recordsでのアウトプットです。

 

よく訓練された発信者を目指して

 

私は台湾インディーズ音楽のTSUTAYAになりたい、というマインドで活動しています。

 

なので、「中村さんの記事を読んで新しいバンドを知れました!台湾面白いですね!」とか、「新しい世界が開けました!」というようなご感想を言ってもらえた時にはやっぱり、やりがいを感じます。

 

あとはタピレコはAmazonアフィリエイトに加入しているから、私の発信経由でCDや音源が売れたことが確認出来たらすごい嬉しいなと思います。

 

あとは、この考え方に共感してくれた法人の方が発注してくれたり、アーティストさんたちから感謝されたりしたときとか。

 

活動していく中で、ミスをしたり上手く伝えられなかったりすることも当然あり。慌てて直したり、もっと深堀できたな…と思うこともある。たくさんある。

 

だけどその度に、音楽が好きな人達、そして台湾のことが好きな人たちに支えられてここまできました。

 

そんなわけで、本業の傍ら、これからもよく訓練された発信者であれたら、と思うので、負担にならない範囲で、一緒にいてくださいませ。

 

それではまた。

 

台湾ライターのひとりとして。中村より。

 

すかさずCM!台湾インディーズ音楽 Playlist

暑くて外に出れない!そんな時はおうちで涼みましょう。アイスのお供に、台湾インディーズ音楽が200曲弱入ったプレイリストをどうぞ。

 

音楽が好きな皆さんと一緒につくりました。