台湾フェスのオーガナイザーに苦労話を根掘り葉掘り聞いた! guest: Sogare 曾我黎(タピレコのオフレコ #9)

 

この記事は、Podcast「タピレコのオフレコ #9 台湾フェスのオーガナイザーに苦労話を根掘り葉掘り聞いた! guest: @sogare728」の文字起こし版です。

 

 

出産してました

 

中村 :台湾音楽コラムニストの中村のアジアと音楽にまつわるストーリーを発信するポッドキャスト、タピレコのオフレコへようこそ!

 

サクライ:ようこそ!

 

中村:皆さんお久しぶりです。1年以上ぶりぐらいの配信になるんですけども、ポッドキャストずっとお休みさせていただいてて、何をしていたかといいますと、今年の4月に娘を出産しました。

 

サクライ:いえーい

 

中村 :今娘が隣の部屋で寝ていながらの収録をさせてもらってます。これを機にまたポッドキャストもやっていけたらと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。今日は最近、ライターとして活動を始められたサクライアヤコさんの企画でお届けしています。サクライさん、軽く自己紹介をお願いいたします。

 

サクライ :サクライアヤコといいます。沖縄の山の中で、アジアの音楽だったり、台湾の音楽だったりを1人でコツコツと楽しんでいるコラムニストです。インスタグラムで、日本のアーティストとアジアのアーティストのコラボ曲、コライト曲を中心にした楽曲のレビューであったり、コラムの連載をしています。

 

中村 :サクライさんのコラムを毎回読ませていただいてるんですけど、サクライさんの文章がすごい突出してるのは、「もうこれ音楽聞いてる量が半端ない人のコラムだ」っていうのがすごい伝わってくるんです。

 

【Column】コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.6ニコイチの深みを堪能!-リスナー的コライト楽曲の楽しみ方 – MusicLaneOkinawa

 

楽曲の紹介に説得力がすごくあるし、頭の中にアジア音楽曲辞典みたいな状態にこの人なってるなみたいな。最初サクライさんってコライト曲(=コラボ曲)がずっと好きな人だと思ってたんですけど、最初はそこまでじゃなかったみたいなところも率直に書いてて、すごく共感できたり、面白いので皆さんもぜひ読んでみてください。よろしくお願いします。では、そのサクライさんの企画とは?

 

サクライ :今回コラム連載でお世話になったとある方のお話が、めちゃくちゃ面白くて、これは私1人で話し聞くよりも、誰か巻き込みたいなと思ったときに、めぐみさんの顔が思い浮かんじゃいまして。タピレコのオフレコでやりませんかっていうことで、企画込みで、ゲストも込みで呼んでっていう無茶ぶりを。

 

中村 :でもねすごいありがたかったんですよ。なんかタイミング的に出産して、赤ちゃんによると思うんですけど、半年ぐらい経つと生後一、二ヶ月のカオスよりは落ち着くんですよ。やっぱりそのタイミングでまたポッドキャストやりたいなって思ってたタイミングだったので、なんかすごいこれは運命だと思って。

 

波の上フェスティバル振り返り

 

サクライ:企画を発表したいと思います。沖縄の音楽フェス「波の上フェスティバル」と台湾「Neon Oasis Fest」を繋ぐ重要人物、Soagareさんに二つのフェスのコラボの裏側を聞いてみたということで、やっていきたいと思います。

 

中村 :それでは本日の真のゲストSogareさんおよびしてます。Sogareさん、よろしくお願いします!

 

Sogare :よろしくお願いします。皆さんの投稿とか紹介の記事をツイッター越しに眺めてたので、こうして実際にお電話のような形で、遠隔でお話できてすごい嬉しいです。

 

サクライ:よろしくお願いします。

 

中村:ちなみに今はどちらから繋いでらっしゃるんですか。

 

Sogare:台北の"師範大学"という中心部のエリアに、「叁朝屋」というスタジオを構えていて台湾人や、台湾にいる日本人のラッパーと、3年ぐらいスタジオやっていて、今日はそこから繋いでいます。

 

中村 :師範大学っていうと最寄りって、

 

Sogare:古亭駅とか台電大樓の近くで。

 

中村:mangasickとかWhite Wabbit Recordsとか

 

Sogare:White Wabbit Recordsはすぐ近くです。

 

中村:ラッパーさんもWhite Wabbit Recordsって行かれるんですか。

 

Sogare:いやでも、あそこまた界隈は違ったりするのかも。でもたまにちょっとディグに行こうかって、散歩がてら行くことあるんですけど。

 

中村:サクライさんはSogareさんの関わっている波の上フェスティバルに参加されたそうですけども、どんな感じでした?

 

サクライ:楽しかったですよね。波の上フェスティバル。

 

Sogare:最前列で子供を抱えてめっちゃ踊ってるサクライさんをステージ上から眺めたり、下から見たり。超楽しそうでした。

 

サクライ:波の上フェスティバルの説明を少しすると、ヒップホップに特化した音楽フェスで、ヒップホップだけじゃなくて、ダンスだったり、スケートボードだったり、自転車のBMXだったり、barber💈だったり、ヒップホップを盛り上げるストリートカルチャーがもう一気にギュッとまとまった沖縄の中でも重要なフェスなんです。今回波の上フェスティバルには、台湾からLeo王、PiNkChAiN、HUGO3組出演してまして、まずファン目線で言うと、barber💈で台湾のアーティスト全員そこで髪切ってるんですよ。

散髪をする春艶

 

Sogare:(好きなアーティストの普段見られない姿が見れて)ファン得ではある。

 

サクライ:とってもファン得な空間でした。

 

中村:その発想はなかったわ。。

 

Sogare:フェスのステージの向かい側の、少し高くなっているところにバーバーがあって、散髪をしながらステージのパフォーマンスを見れるんです。今回自分も含めて、自分とHUGOとPiNkChAiNと、Leo王のステージに参加していたラッパーの春艶が全員そのバーバー💈で髪を切るっていう中で、PiNkChAiNは普段、結構ロン毛とかすごいボサボサな感じなんですけど、いやもう今回絶対俺は沖縄のバーバーで髪切るんだ、って言ってて。

 

サクライ:あと、今回は波フェスにNeon Oasis Festでお店を出店してまして、そこのルーローハンとタピオカミルクティーがあまりにも本場の味すぎて、美味しすぎて、私、毎日食べてました。

 

Sogare:どうでした?あのルーローハン。今回は実験的な感じでやってみようということで。監修はAsylumという台北の大安駅の近くにある、会員制まではいかないけどちょっとクロージングのバーがあって、そこのルーローハンが美味しいっていうので、巷で有名なんですよね。夜3~4時までやってるバーで、締め飯的にルーローハンを楽しむというか。台湾のルーローハンって基本的にご飯とあの肉汁の感じなんだけど、Asylumのルーローハンは卵がのってて、調味料が混ざってすごく美味しいっていうので、日本人のアーティストが来てアテンドするときは必ず連れてきます。味はどうでしたか?

 

サクライ:八角の味もそんなに強くなく、お肉もホロホロで柔らかく、大豆っぽいお醤油の味なので、すごく美味しかったです。

 

Sogare:よかった。僕も2日で4杯ぐらい食べちゃった(笑)。せっかく台湾のもの持ってくんだったら音楽だけじゃなくて、食べ物も持っていけたら盛り上がるなと

 

「HUELUI」製作裏話

中村:では初めに、1曲聞きたいんですけども、曲紹介をお願いします。

 

Sogare:はい。この曲は沖縄の大先輩RITTOさんと、あと台湾の超個性的なPiNkChAiNと自分Sogareの3人、RITTO & PiNkChAiN & Sogareで作っている曲で、曲名は台湾語より、HUELUI(ホェルイ)です。

 

 

 

サクライ:この曲を聞いて、RITTOさんとPiNkChAiNのそれぞれの良さをSogareさんのそのサビで繋げてて、なんてすごい曲なんだと

 

Sogare:ありがたいですね。RITTOさんにLevi'sの広告撮影で台湾に来てもらったときに、PiNkChAiNを紹介して、波の上フェスティバルまでにちょっと曲できたらいいねみたいな話になったんです。実際RITTOさんたちが沖縄に帰ってから、自分とBeegYenでビート作りに取りかかったんすけど、まずPiNkChAiNのフローがすごく特徴的なので、合わせた感じのビートを作るのか、RITTOさんのスタイルに合わせるのかというところでもビートの試作は10個以上作りました。共同制作してるBeegYenという台湾人のビートメーカーと、毎日喧嘩しながら作ってたんですけど(笑)。

 

最終的には自分が二方とも合いそうなネタ、みんな馴染みのBoombapの固いリズムをベースを作ることができました。そこにBeegYenが三味線のようなコード進行をギターで再現して取り入れたりして、ちょっと特徴的な雰囲気には仕上がったと思います。RITTOさんはちゃんと1に対して1でしっかり入る人で、PiNkChAiNは1に対して4か5か6ではめるやつなんですよね。オンビートとオフビートを行き来するようなフロウなんです。自分のフックの歌詞は、この1年の中でも、一番まとまったものが書けたんじゃないか思っています。沖縄や台湾で授かったものをちゃんと繋げていく、それは言葉だけじゃなくて、行動していくその自分の態度を曲に落とすだけだったので、そこを行動含め信頼してくれている、RITTOさんとPiNkChAiN含め、自然と楽曲を作成できました。

 

www.youtube.com


映像は沖縄と台中で撮影してて、沖縄と台中ってそれぞれ全然違う場所だけど、同じような思いを持って羽ばたきたいと思ってやってる人たちとその街の様子或いは自然との狭間の感情みたいなものを、どこの国だから何みたいなものではなくて、どこにでもあるような風景でちゃんと映像で繋ぐっていうところが、出来として自分的にはかなり満足しているので、人生の中でも大切な作品になったと思ってます。

 

Leo王、春艷、PUZZLEMANが公開されたばかりの「HUELUI」のMVを見る様子

 

Sogare-GPT爆誕秘話

 

サクライ:波の上フェスで私忘れられないのが、Leo王のステージ見てて、突如、そのLeo王のステージにSogareさんが登場して。それでLeo王のMCだったり、即興のラップをそのままラップバトルの調子でリズムに合わせてアンサーでそのまま日本語訳するっていう。ただの同時通訳じゃなくて、ビートに乗せて同時通訳。実際に観客席から見てて、(Leo王が)台湾の言葉で歌ってるから、それまでずっと外様が何かやってるなみたいな雰囲気はやっぱりあったんですよ。だけど、Sogareさんが日本語訳で、訳してラップをしてくれることで、ちょっとフワッと空気変わったんですよね観客の。言葉はわからなくても、Sogareさんのやってることがすごいことだっていうことはまずわかるじゃないですか。

 

 

中村:SogareさんGPTみたいですね。

 

Sogare :Sogare-GPT(笑)。元々フリースタイルラップを趣味でやってて、他にも仕事で一応同時通訳もしてることもあり。まさかこんな出番が回ってくるとは。沖縄着くまではLeo王とはそんなに親しくなく、到着してご飯を一緒に食べながら沖縄のHiphopの歴史やシーンの紹介をしていたときに、たまたまLeo王がRITTOさんのMVを検索して見始めて、これフック歌ってる人いいね、ってなって、いやそれ僕ですみたいな(笑)。「何、君、ラップをするんだ」みたいな感じになって、一応明日も明後日もフリースタイルラップバトル出ようと思ってますという話をしたら、「じゃあ明日のライブで一緒にフリースタイルラップしよう」みたいな感じになるっていう。前々日に決まったんですよ。

 

沖縄のRITTO、台湾のLeo王

 

サクライ&中村:えー⁈&へー!

 

Sogare:多分Leo王もライブ経験がすごくあって、ライブで曲のkalaをプログラムで流して歌うんじゃなくて、即興だったりバンドチックな表現というか、(沖縄の)オーディエンスとグルーヴを作りたいという意図があったんです。今回のメンバーはそもそもLeo王と春艶のボーカル2人と、DJは大嘴巴(ダマウス)の元メンバーであった台湾と日本のハーフのDJ宗華(彼はダマウスの活動が終わった後に、DMCというスクラッチの世界大会で6位まで取ってるんです)で、ドラムのところはPUZZLEMAN。あのPUZZLEMANのフィンガードラムのビートを刻みながらスクラッチを入れて、そこで楽曲を演奏するという、流動的な動きをライブでしたいっていうところで、その上でフリースタイルに通訳があったら面白いんじゃね⁈という、Leo王からの発案があって、急遽やることになるみたいな。1曲目をそういうノリでやって、それで終わりっていう話だったんですけど、結局毎曲毎曲呼ばれたんですよ(笑)

 

 

 

毎曲の最初呼ばれて、曲の紹介して、って感じで。1曲目終わった時、役割が終わったと思ってちょっと横で一応様子見るかと思ったら、「ラップ通訳!」と呼ばれて、僕も慌ててマイク持ってステージに上がるみたいな。で、何も言われないまま普通にはじまるという。ラップを聞いて、ビートに乗せて通訳をする。小節に入れ込むことは時間的に限りもあるから、100の内容に対して1回頭ん中で理解したものを、韻を踏んだ上でラップにしなきゃいけないから、わかりやすい自分の言葉に変換してアウトプットする。

 

サクライ&中村:へー。

 

Sogare:多分本番はLeo王もちょっと緊張してたのかな。実はリハーサルではもっと盛り上がってて、自分とLeo王が同じ学校出身でしかも2人とも卒業してないんですよ。Leo王はそれが面白いと思ってて、「同じ大学で卒業してないし、社会には受け入れられてないけど今は音楽やってる」みたいなノリのラップをリハーサルでやったらもうみんなめっちゃ馬鹿受けしててて。

 

中村:ここまでお話聞いて、Sogareさんの教養高い感じでちゃってますよね。

 

サクライ:面白すぎるんですよ。なので本当に1人でこの話を聞くのが勿体なさすぎるなと思いまして。

 

中村:確かにこれは全国に広まるべきですね。聞いてるか、台湾音楽リスナ~!

 

シーンをつなげるってなんだろう

 

中村:シーンを繋げたいみたいなこと言ってる人っていっぱいいると思うんですけど、なんかSogareさんはもうナチュラルにやってるなと思って、そこにぶれがないみたいな。何かと何かを繋げるみたいな原体験っていつだったんですか。


Sogare:例えば自分が台湾に来たり、東京で台湾の人と知り合ったり。自分が中国語を始めたきっかけは、中国人との交流でした。教えてもらったり、時に教えたり、違う土地の人の視点によって、自分が知らなかった視点を体験することは皆さんあると思います。自分の知らない世界があったんだということを知る体験、それは台湾に来てもそうだし、沖縄に行ってもそうだし。その感動から生まれる感情だったり、楽しいこと、もちろん人と人が出会うことは嬉しいことだけではないんですけど、感情が生まれるということ全てが豊かさであると思っていて。それは自分も体験したいし、参加する人全員にも携わってほしいみたいなところ(エゴ)があって。これは「国際交流」が好きというよりかは、面白いものを知ったり、感情を豊かにしたいみたいなライフワークみたいなところですね。

 

PiNkChAiNと黃嬉皮YellowHippyのメンバーは、沖縄のアーティスト(SOREMOMATAYOSHI、inata夫婦)の家に1週間ホームステイ



 

中村:なんか繋げる中心の人って、なんか繋げまくってるとだんだんそこに遠心力が働いてくるじゃないですか。その遠心力がしんどくなることってないんですか。

 

Sogare:でも自分、繋げる人みたいな意識は全然なくて、自分自身が知りたいだったり、知らないものを知りたいみたいな気持ちがやっぱり大きくて。自分自身がずっとプレーヤーであり続けるということをやめない、自分がプレーヤーじゃなくなったらもうやらないっていう線の引き方みたいなところはあります。

 

中村:なるほどオーガナイザーであって、プレーヤーでもあるみたいな。

 

Sogare:日本でも台湾の業界でもそうですけど、プレーヤーなのか裏方なのかみたいな、この議論は今でもあるあるですけど、自分はでもプレーヤーでもありシーンを作る人間でもありたいみたいな、何かそういう憧れは多少あって、それは一応心がけでもありますね。

 

中村:その文脈で憧れてる人っています?日本とか台湾で。

 

Sogare:ここであえて言及しておきたいのは、例えば日本の人が「台湾の音楽を聞くきっかけ」って何だったんだろうと考えたときに、Spotifyで聞けたりする他に、中村さんやサクライさんのように紹介記事を書いてくださる人がいるのも大きいですけど、その前に体を張ってシーンを繋げてくれた人がいるから、東京でこんなにも台湾のアーティストが見れる。台湾で、日本のアーティストが聴ける。台湾では日本のアーティストのライブが、ほぼ毎週というか1日に何個もやってる状況ですけど、最初はどれもお金にならなかったはずなんですよね。リスナーもいないし、シーンもない中で体を張ってきた人がいるということ。僕も直接面識はないんですけど、名前を出させていただくならば、例えばBig Romantic Recordsの寺尾ブッダさんは、多分この日本台湾の音楽シーンの中ではかなりの功績者ではあると思うんですよね。その点はすごく敬意を払いながら、自分なりにできることをまた自分の景色の内外でやっているというところもあります。今、台湾と沖縄のヒップホップシーンってお互いに面識があまりない状態ではあるんですが、だからこそ今の時代にやりたい、というのはあります。

 

Sogareさんのフェス・コラボ論

 

サクライ:(2つのフェスの)コラボにあたって譲れない、ここはちょっと注目してほしいっていう点があれば教えてほしいです。

 

Sogare:Neon Oasis Fest.自体は、すごくイケてる人を呼ぼう!というよりかは、国際水準のフェスを作りたいという人たちが主催してるフェスなんです。台湾でもヒップホップが近年流行っていることもあり、ヒップホップで一つステージを作ろう、アジア中のHiphopをやってる人たちを呼ぼうっていう話から始まっていて。台湾と日本はこんなも近いのに、なぜHiphopで交流があまりないんだろう、という自分の意識も重なって。

 

台湾では実際、日本のヒップホップが“ほとんど”聞かれていないけれども、自分的には土地との関係性で作られる音楽、という意味で、特に沖縄のヒップホップは台湾と必ず共鳴があると思っているので、沖縄との間でHiphopの交流を始めることは必然で、そのためにはお互いのライブを観ることが大事だと思っていて、これはアーティストもそうだし、オーディエンスが実際にお互いの姿を見ることから始まるという意味でも、今回この沖縄、台湾企画をやらせてもらっています。

 

波フェスでの台湾企画では、今年はお互い3枠、枠を作ってやってみようと、沖縄からはRITTOさん、CHOUJIさんという確固たるメンツにTORAUMAさん。

 

台湾側はまず、Leo王は絶対連れて行きたいし、台湾版グラミー賞とも言われる金曲賞も取ってるし、レゲエとも距離の近いヒップホップをやっているし、沖縄ではウケがいいだろう、と。ちょっと変わり者だけど確実なヒップホップであるPiNkChAiNで2枠目が決まり。三枠目を決めるのが結構難しくて。

 

ぶっちゃけ台湾では全然売れてない(売れてないってのは僕も、HUGOに対していつもそういうふうに冗談を言ってるんですけど)、台湾では大衆にはまだ受け入れてもらえないHUGO、彼は(日本のDJ・音楽プロデューサーの)OLIVE OILさんにものすごく憧れていて、小さい頃から音もすごく影響を受けて、ちゃんとそれを中国語でアウトプットしていて、そういった繋がりも含めてHUGOを選びました。

 

憧れのOlive Oilと、やっと話すことができたHUGO

 

HUGOは去年『DUGOUT』というアルバムをリリース。自分の中では、2022年の台湾ヒップホップ内のベストアルバムだと思っています。彼の3枚目のアルバムである『DUGOUT』は、彼のお姉さんが亡くなったという事実と向き合っている曲です。『DUGOUT』より1曲目の「FALLOFF」をお聞きください。

 

 

Sogare:交換留学のような形で国の代表としてフェスに出演するような機会は、それぞれのアーティストが、あまり経験したことのないことではあると思います。もちろんLeo王やKAO!INCは世界ツアーの経験もあるけど、実際に沖縄ではどんな反応を得られるのか?例えばPiNkChAiNも台湾ではものすごく自信満々でライブするけど、沖縄ではどうしてもちょっと緊張したような姿が見えたり。

 

PiNkChAiNは那覇市の児童館でライブも

HUGOも台湾では全然人気がないけれど、沖縄に来てみたらなんかみんなが(胸に響いて)驚いた表情してるだったりとか。Leo王は沖縄に来て、(那覇の老舗Club 熱血社交場なんかに行ったりして)こんなにもいいアーティストがたくさんいるなら、もっと早く来たらよかった、と話していたり。こうした証言全てが、交流の始まりの一歩だとは思っています。

 

個人的にはRITTOさん、CHOUJIさんの、台湾でのステージをものすごく楽しみにしています。沖縄ではものすごく人気のあって説得力のあるラッパーが、台湾ではどういった反応をされるのか。ステージ下の人たちがどんな表情で、彼らを見ているのか、これは(大変恐縮な言い方ですが、)RITTOさん、CHOUJIさんに限らずに、アーティスト個人の成長にも繋がると思うんですね。そういった動きを含めて楽しみにしています。

 

台湾と沖縄の交流、商業的な価値を生み出すことはできる?

 

サクライ:気持ちで繋がって、どんどん拡大していきたいっていうところが、すごく今のお話を聞いてて感じたんですけども、気持ちでどうにもならないことってあるじゃないですか。苦労話、言える範囲でいいので、何かありますか。

 

Sogare:本当難しい。フェスって一応商業的な行為だし、音楽もレーベルがいてA&R、マネージャーがいて、結局商業的に動いている。例えばピュアに誰と誰で曲作ったら面白いんじゃないなんて話があっても、請求書をもらってから、いやこれは無理だよみたいな話も、当然あるし。台北にはいろんな人がいて、台北もいろんな国際的な情報が入ってきて、速度の速い都市の中にあるフェスではあるので、沖縄との交流をやるにあたっても、そこに商業的が価値があるかという意味で、多分多くの人が自然と気にしていることではあると思うんですね。

 

最初に体を張っていた人がいて、そこで耐えて耐えて、新しいシーンになって新しい風景になっていく。という意味では、台湾と沖縄に価値を感じる人はそもそもいて、多分今始まっただけでもなく、様々な小さな交流がある中で、きちんとシーンとして認められるかどうかは、正直かなり難しいです。

 

実際的にその商業的価値に繋がる・繋がらないみたいなところで、すごく周りに言われたりすることもあるし。でもここで折れちゃったら、自分はもうアーティストとしてはやっていけないよ、なんてことを思いながら、ギリギリを攻めている状態なんですけれども。ただ同時に台湾と沖縄両側で様々な人の理解があってこのプロジェクト自体が成立しているので、そういった人たちに感謝しながら、もらった分を授かった部分をもっと大きくするために、やらせていただいています。ありがとうございます。

 

中村:では最後に来年1月に開催予定の音楽フェスティバル、Neon Oasis Fest.について簡単にご紹介をお願いいたします。

 

Sogare:1月の19日から21日まで台北の近くにある新店文山農場というところで行われるNeon Oasis Fest.、国内外から総勢50組から参加して、沖縄からも3組のラッパーと2組のDJが参加して、かなり盛り上がる音楽祭になっていると思います。もしお時間、ご予算の都合もろもろ合って来れそうな方、ぜひお会いしましょう!

 

中村:これを聞いている日本の方、あるいは台湾在住の日本の方は、ぜひ遊びに行っていかがでしょうか?

 

タピレコのオフレコ。今回サクライアヤコさんの企画でお届けした第9回はSogareさんにお越しいただきました!ありがとうございました。

 

Sogare:最後に、ちょっと感想というか言っておきたいことがあって。実際にとある文化に興味を持ったときに、例えばインターネットで調べたり、Twitterで情報を見たりと、最初に文化に触れるのきっかけや入り口は、こうしたコラムニストの人たち、様々な情報発信をする人、そして情報を翻訳をする人など、様々な関係者がいて、国と国、言語をまたぐシーンが存在できていると思っていて。このポッドキャストもそうですけど、様々な人がそのシーンを観察して、自分の感性で、主観的だったり客観的な情報だったりを発信して、受け取ったさまざまな人がそれを受け入れて、自分なりに解釈をして新しい文化にしたり、自分の心地の良い場所で、それを眺めていたりだとか、シーンっていうのはいろんな人がいて成り立っているっていうことはものすごく感じるんですよね。

 

サクライさんが、波フェスが終わってからインスタグラムにLeo王の感想ものすごく長く書いていて、僕は1文字1文字1文字を見ながら、もう本当ありがたいなと思っていたんです。文化を翻訳をする人、翻訳をしなかったら情報がわからない人がやっぱりたくさんいて、通訳をする人、文字を翻訳する人。「なるほど、こういう人が国境の先には、あの島の先にはいるんだ」という認識を始めるところから文化の越境が始まっていくので、こういった方々に感謝をして、僕は一応プレーヤーとしても、裏方としてもこれからも頑張っていこうと思っています。ありがとうございます。

 

サクライ:ありがとうございます。

 

中村:では、また次回お会いしましょう。最後は台湾の挨拶で、

 

Sogare・サクライ・中村:下次見!