Interview:「自分が彷徨う時に、音楽に何回も救われて生まれ変わってきた」ゲシュタルト乙女

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コロナ情勢下で、もどかしい想いで日々を過ごしています。こうした中、台湾のバンドが日本に向けて情報発信をしてくれると、つい目を通してしまうものです。

 

ゲシュタルト乙女のアコースティックライブツアー、「di/verse」が決定したとの連絡を受けたのは、2021年4月。印象的なツアーポスターは、月刊コミックビームにて『緑の歌』を連載中の高 妍(ガオ イェン)さんによるもの。

 

その後コロナ情勢の変化の中で、ツアーを延期にせざるを得なくなるも、変更後のツアー日程が11月6日、7日、27日に決定しました。

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ゲシュタルト乙女は、日本デビューをした当初、「日本語で歌う台湾のバンド」として主に台湾好きの方へ認知されていました。

 

現在は「このバンドめっちゃ良いと思って調べたら台湾のバンドだった!」という声もSNSで多くみられ、日本の音楽ファンに浸透しつつあります。そんなゲシュタルト乙女と久しぶりのインタビューをお楽しみください!

 

 

 

音楽で伝えるイメージと、ロジカルな楽曲づくりで完成する世界

ーーまずは6月4日に公開した「生まれ変わったら」のMVについてお話を聞かせてください。TwitterでMikanさんは、MVの仕上がりがイメージにぴったりと仰っていましたが。

Mikan:元々、(映像作家で、今回MVのディレクターを担当した)アラユさんの作品がとても好きで、安心して全部をお任せると思っていたので、あえて撮影内容について具体的に討論をしませんでした。

 

出来上がったMVをはじめて見たときには、歌詞を書く際にちょうど頭に浮かんだ灰色の樹海のシーンがそのまま映像化されていてとても驚きましたし、不思議だ!と思いました。言葉を交わさなくても音楽で通じる部分もありますね。

 

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ーーありがとうございます。このMVや、歌詞の世界にも表れているように、Mikanさんには独特な世界観があると思います。Kaiakiさんが音楽制作面で心がけていることはありますか。
 
Kaiaki:これまでゲシュがリリースした曲の構成はほぼ僕が自力で作っていて、曲を制作する際に、何点か把握してから制作を進めることがあります。
 
一、メンバーと自分の好みを掴んでどんな曲を作るか、目標を立てる
二、リズムとメロディーを重視する。
三、歌いやすいメロディーにする。日本語のわからない台湾のリスナーでも、メロディーで自分たちの曲を気に入ってもらいたいと思うためです。
四、Mikanの歌声は特別で、台湾のポップスシーンよりも日本の音楽のポップスのスタンダードが合うと思うので、アレンジする際には中高音域に対しての配置を多く時間をかける。
 
こんな感じでしょうか。
 
ーーロジカルだ…。ちなみにMikanさんはJazzmasterを弾かれていますが、このギターを選んだ理由と、よく使うセッティングを聞かせてください。また、バンドアンサンブルの中でKaiakiさんとの対比を出すためにどんな音作りをしているか、そしてヴォーカリストの立場からは自分のギターサウンドとの関係性について何か意識している事があるかお聞きしたいです。

 

Mikan:ジャズマスターの、エレキとアコギの間の音の部分と、気軽に弾いても自分が表したい音を出せるところはとても好きです。

繊細面を持つ多変化な音を描くKaiakiのギターリフはまるでクリームソーダのアイスクリームのように、曲の上層に綺麗に乗せて、私の方はメロンソーダでバックで安定したシュワシュワな音を目指して音作りしてます。

 

ギターの音は自分の歌と被らないようにEQを調整したりしてます。また、ケーブルはKAMINARIのを使って、より透明な音を追求しています。

 

ーーなるほど。ちなみにKaiakiさんは好きなギタリストとかいらっしゃるんでしょうか。「生まれ変わったら」のイントロが衝撃的なので気になりました。

 

Kaiakiyngwie malmsteen、Marty Friedman、guthrie govan、Jimi Hendrixを尊敬してます。

 
ーー「生まれ変わったら」の制作で特に思い出深いことはありますか。
 
Kaiaki:そうですね…。制作については沢山の思い出がありますね。例えば実は「生まれ変わったら」は、リリースの一年前にとっくに完成していたのですが、夢を追いかける途中で傷だらけでも前に進む、切ない雰囲気を作りたくて、リズムや細かい部分はちょっと自分の中に納得できない部分があって、何度も修正しました。
 
ーー皆さんがこだわった結果、歌詞とサウンド、MVひとつひとつの点が、一つの世界を築いていると思います。色あせない魅力を感じています。
 

アコースティックと台湾のレトロな雰囲気が一致

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ーー今回、「di/verse」ポスターに込めたイメージ、想いを教えてください。

 

高 妍:Mikanさんのお誘いで今回ツアーポスターを描かせていただきました。普段、忙しい日々送ってますが、音楽に関わる仕事にはとても憧れていたので、声を掛けていただいた際は本当に嬉しく思いました。また、バンド側とのやり取りの中でもとてもスムーズで完成しまして、とても感謝してます。


ーーメンバーの2人とはどんなやりとりを?

 

高 妍:当時メンバーたちの要望は「台湾のレトロな雰囲気」ということでしたので、ベスパのバイクに乗って花柄のドレスを着た女の子を描きました。背景はトタン建物のような、少し荒涼としたシーンです。

ポスター以外、シンプルな動画MVの制作にも協力しました。その曲の歌詞の冒頭にある「風が君の頬に掠れた」というフレーズが、私にインスピレーションを与えてくれました。女の子に髪の毛がはためくように見せることは素晴らしいと思い、構図が浮かんできました。

 

ーー高 妍さんは、ゲシュタルト乙女以外にも、台湾のインディーズバンドがお好きで、雑誌でも紹介していましたよね。

 

高 妍:台湾では現在コロナウイルスの影響されまして、ゲシュタルト乙女のイベント自体は延期になってしまいましたが、最近は情勢も段々落ち着いて、色んなライブが開催できるようになってきました。音楽好きの一人の観者として、とても楽しみにしてますね。

 

ーーありがとうございます。続いてMikanさんにお聞きします。ツアータイトル《di/verse》の“di”と“verse”の間にスラッシュ“/”を入れた意味は?

 

Mikan:di/verseとは「さまざま、色々」という意味を持つ造語です。diは英語の「分裂、違う個体」との意味、またverseは音楽用語のヴァース(主題)との意味もあります。別々のアーティストたちと交流する際には、ゲシュのすべての曲のように、1曲1曲はそれぞれの世界であり、それぞれ違う個体だけれど、一人ひとりの世界には別々のストーリーがあり、それぞれが曲を解釈することで、誰もがストーリーの主人公になれるという意味を込めました。

 

ーーなるほど。Mikanさんは以前「人に寄り添う楽曲を作りたい」とYouTubeのインタビューで発言していましたが、そう思うようになったきっかけや原体験はありますか。

 

Mikan:自分が彷徨う時に、何回も音楽に救われ、生まれ変わってきました。「いつもゲシュの音楽に救われてる、前に進む力になる」とファンの子がカードやメッセージを送ってくれてます。そんなメッセージを読むたび、強く思いますよね、人に寄り添う楽曲を作りたいって。

 

ーーありがとうございます。同じインタビューで、人と人との距離感について仰っていたと思うのですが、そもそも人と人との距離感を感じるのはどんな時ですか。

 

Mikan:人間が生まれてきて、自分一人の個体として生きて、自分以外の他の生命を認知した時点で、人と人の距離が生まれると思います。一人暮らしし始めた時に、より深く感じますね。

 

ーー因みに、今回のツアーで、ライブ映像をyoutube等にアップする予定はありますか? いま台湾へ観に行けない日本のファンとしては演奏している映像が観れるととても嬉しいのですが…。

 

Kaiaki:今は一旦延期状態なってますので、di/verseのツアー現場映像での撮影も考えておりますが、実は色々変化がありそうでまた確定で動画をアップすると言えないのですが…。

 

ーーツアーの延期は残念ですが、高 妍さんとゲシュのコラボレーションが見られるということでとても楽しみにしています!


これからのゲシュタルト乙女について
 

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ーーこれまで、日本と台湾で音楽活動を展開していますが、音楽ビジネスで似ていると思うところ、異なると思うところを教えてください。
 
Kaiaki:ジャンルかな。台湾人はジャンルを問わず、流行りに乗って話題になってる音楽しか聴かない子がどんどん多くなってます。
日本だとジャンルから分けて聞く人が多いかなと思ってます。


 
Mikan:SNSかな?日本では多くの方がTwitterをやっていて、台湾ならFacebookが多いですね。
告知内容の対象によって出し分けをしていて、ラジオ系の告知はほぼTwitterで告知しておきます。
それから日本と台湾ともかく、海外のファンもよくInstagramを使用しまして、海外ファンのためにたまに英語で告知したりもしてます。
 
 
ーーコロナ禍でも、日本へ積極的に情報発信をしていると思います。コロナ禍が終わったら日本の訪れたい場所、演奏したいライブハウス、その他やってみたい活動を教えてください。
 
Mikan:今年はすごく光栄なことに、北海道AIR-G'FM80.4のスパクル!!cool beats & pop life』の中のコーナー「しゃべりたいわん」を担当することとなりまして、台湾の音楽、文化、グルメなどを紹介する番組を一緒につくっています。まだ北海道行ったことなくて、番組でのお仕事を通して、北海道への愛が溢れてます。コロナが落ち着いたらダッシュで駆け付けたいです!
 
ライブしてみたい箱は下北沢のGarageです!Garageに出演しているのは好きなバンドばかりなので、憧れて自分も出てみたいと思いました。また、隣の「サムライ」でカレーを食べたいです!フェスかサーキットイベントなどにも出たい。


 
Kaiaki:日本の隅から隅まで全部ライブしに行きたいです。FUJIROCKにも出たいですし、夢は武道館!(笑)
 

ーーこれまで何度かメンバーチェンジをしていますが、次にメンバーが増えるとしたらどんな人がいいでしょうか。
 
Mikan:アニメの「僕のヒーローアカデミア」の中のキャラクターで、3年生のミリオ先輩みたいに、強くて、空気を読めて、楽観的な人がいいな!ずっと笑顔で一緒にバンドの未来を迎えられる人!
 
Kaiaki:向上心を持って色んな角度で物事を見ることができて、良いコミュニケーションを取れる人がいいです。もっとも大事なのは、時間をかけて自分のスキルを精進する人がいいなと思います。
 
ーーありがとうございます。早くライブハウスでお会いしたいですね!