なぜ、普通の事務OLに海外アーティストへのインタビューができたのか(後編)

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こちらの記事の続きです。

 

前編あらすじ

 

「どうして日本の人たちは台湾の音楽シーンのことをあまり知らないんだろう?こんなにたくさんの良い音楽があるのに…!」

 

ーーアジアの良質な音楽の情報が今よりももうちょっと出回る世界になったらいいなぁ

 

私はこの突拍子もない目標にTapioca Milk Recordsという名前をつけて動き出した。

 

はじめはおすすめアーティストの紹介、歌詞の翻訳、そしてアーティスト本人との交流を通して、少しずつコンテンツを創っていった。

 

そして「インタビュー記事をやったらいいと思う」というアドバイスをもらいながらも「人付き合いが苦手だから」という理由でぼんやりと保留にしていたところ、転機が訪れた。

 

 

 

 

STEP6:チャンス到来!その時、私は

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Mary See the Future、来日。

当サイト初のインタビュー記事は、台湾のインディーズバンドMary See the Futureの来日ライブに合わせたものである。

 

彼らはシーンの中でどういう位置づけかというと、2007年結成でキャリアは今年で11年ほど。台北の1000人規模のライブハウスをsold outするほどの人気と実力をもつバンドである。また、五月天(メイデイ)のベーシストMASA氏がアルバムに参加したことでも知られている。

 

音楽シーンの流行は移ろいやすいものだけれど、Mary See the Futureは流行に左右されない音楽性であたたかいファンがついている。本当に良いバンドってこういうバンドなのかもと思う。

 

そんな彼らのツアーの一場として来日ライブが行われるというニュースが舞い込んできたとき、私は損得勘定をせず「インタビューをやるなら、ここだろう」と早々に決めていた。

 

懇願するという手口。

とはいえ、このとき、サイト上で発表したインタビューの実績は0本の状態、PV数だって今の半分くらいだった。

 

(どうしよう…あまりにも説得材料が無い。)

 

誰だって、実績も後ろ盾も無いライターに自分の言葉を渡したくない。どうしよう……

 

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私は腹を括って「懇願する」という手を打つことにした。

 

来日情報が解禁となったその日の夜。

私は日本人で、台湾音楽を紹介するウェブサイトをやっていて、これまでに書いた記事はこれで、PV数はこれくらいで…あなたたちの来日ライブの前に、せっかくだからインタビューがしたいのです!と中国語まじりの英語で長文で書いて送った。

 

失敗も成功も頭になかった。

もしここまでお願いしてダメなら、いずれにせよ何をやってもダメだと思った。何かが大きく欠けていて、戦略を見直すタイミングということだろう。祈るような気持ちでインタビューオファーを送った。

 

そして翌日。「インタビュー、受けますよ!」という返信を頂いたときは、嬉しいと同時に、どうしてインタビューを受けてもらえるかわからなくて意外だなと思った。

 

なんでインタビューを受けてくれたんですか

インタビュー記事を公開した後、どうして私のインタビューを受けてくれたんですか、という質問をしてしまった。するとマネージャーさんは「誰の質問か、どのメディアの質問かは関係が無い。ただ良いエネルギーがあると思った。」と言ってくれた。

 

涙が出そうになった。そんな風に言ってもらえるなんて。

私はこのとき「これからどうなったとしても、常に自己ベストを出せる良いメディアでい続けよう」と思った。

 

インタビューにハマる

人の話を引き出すおもしろみってあると思う。

 

ひとつ経験してみて気づいたのは、インタビューをすることで予想もしていなかったお返事が来るということ。そして、そのお返事を通してどんどん世界が広がっていくこと、そしてリスナーさんの反応を読めるということだ。

 

これはなにもMary See the Futureだけに限った話ではない。3ヵ月前に公開したゲシュタルト乙女のインタビュー記事は、いまでもSNSでシェアしてもらえているし、なんとユニバーサルさんのTwitterアカウントで紹介していただくこともできた。

 

私が勝手にやりたくてやったことが人の役に立つなんて意外だ。でも、意外を積み重ねた先に次の道が開けるのかもって思う。

 

ムリなくつづけてみる

楽しいことは続けたくなるもので、次々とインタビューに挑戦していった。

 

実績を並べてみると、大体一ヶ月に一本以上のペースになっているが、とくにペースをキープしようと思っていたわけではない。出会いや感覚に任せている。

 

【インタビューの実績】 

2018年4月   Mary See the Future

2018年5月  ゲシュタルト乙女

       Youtuberはなちゃん(はなちゃんねる台湾)

2018年6月  Start Trip Trip

2018年7月  CROCODELIA 新道さん(前編/後編)

2018年8月  No Party For Cao Dong

 

台湾にはたくさんのアーティストがいるし、少しでもたくさんのアーティストのお話を聞きたいとも思う。もっとハイペースで実績を積もうと思えば、それは不可能ではなかったのかもしれない。

 

でも、仕事を抱え込みすぎてしまうと、結局ひとりひとりと向き合うことが難しくなる。それって適当な仕事ぶりを披露することになり、危険だ。

 

違和感のあることは、どうせ続けられない。続けられないと、応援してくれた人をガッカリさせることになる。そんなのアンハッピーだ。

 

だから、違和感のあることは、他人に迷惑をかける前にやめとく。 

 

 

 

STEP7:やりながら、ガワを整える

(みなとみらいにて撮影) 

 

一般的に何かをはじめるときは、まずはしっかり準備を整えることが大事と言う人も多い。でも私はその逆の「やりながら、必要なものを集めていくスタイル」を貫いている。こんなことができるのも自由に発信できる個人メディアの醍醐味かもしれない。

 

やりながら身についていったものはとても多いけれど、ここでは具体的に三つ挙げる。

 

独自ドメインの取得

Mary See the Futureのインタビューオファーを取り付けてから、独自ドメインの取得を行った。インタビューを掲載する以上、いつまでもブログサービスのドメインを使うわけにはいかない。それでは格が合わない。

 

日本発信であることがわかるようにjpドメインを使うことにした。もちろん費用はかかったが、全く問題はない。これまでにコントワー・デ・コトニエのワンピースにつぎ込んできた金額と比べれば。(笑)

  

ただのアンケートにしない

当サイトではE-mailインタビューを行うことも多い。E-mailインタビューを編集する上で気を付けているのは、ただのQ&A集とならないよう話の流れをきちんと作るということだ。

 

これはつまり読み手への配慮である。一問一答形式のインタビューをそのまま載せるとただのアンケートとなってしまい、読みにくいのだ。もちろん致し方ない部分もあるが、 編集上の工夫で会話風にできるならしてしまう。

 

とはいえ、アーティスト側の回答を大幅にいじるわけにはいかないので、そこは質問側を大胆に編集することで、流れを作るのである。ってこれって当たり前の話…ですかね…

 

これって、もしかしてメディアで働いたら教えてもらえることなのかもしれない。でもそういう当たり前のこともやりながら習得していった。

 

苦手なことは流行を模倣する

私はデザインが苦手である。たとえば、記事のデザイン面もあまり得意ではない。苦手なことこそ、今流行っているトレンドを一旦模倣し、違和感のある部分を少しずつブラッシュアップしていくことにしている。

 

特に参考にしたのはこちらの記事である。

 

WEBメディアでの情報発信をする前に、気をつけるべき26のポイント | クリエイティブの求人情報サイト-CINRA.JOB

 

読みやすいレイアウト(流し込み)、発言者の名前を色分け、シェアデバッガーの存在などのアドバイスにずいぶん助けていただいた。苦手なことは(モラルに違反しない程度に)模倣したら良いと思う。そこから自己流を編み出していけばいい。

 

 

 

 

STEP8:エンタメやろうぜ

(台湾の蚵仔煎ポテチ)

 

台湾の国民性ってすごく温かくて優しいと言われている。だからそこに集まる日本人も優しい人が多いし、インタビュー記事もほっこりするものが多い。

 

もちろん、優しい方向性の記事がプロモーション上の効果を発揮する場合もある。ただ私がインタビューする相手はアーティストだし、場合によっては尖った意見や、ネガティブな意見を持っていることもある。

 

そこで必要に応じて「偽悪」の概念を持ち込むことにした。

 

おバカだと思われても良い

たとえば、相手の本音を引き出すために、あえて反対の意見をぶつけてみることもある。

 

たとえば肉が好きそうな人にあえて「あなたはお魚が好きですよね?」と問う。すると、こだわりがある人ほど「いやいやそうじゃないんです、実は肉が好きなんです!」という肉に対する熱い思いが次々とあふれ出てくる。実は読者が読みたいのってそういう肉汁めいたものかもと思う。

 

それくらい斬りこんでいかないと、人の本音は聞けない。本音が引き出せるなら、私自身はお馬鹿だと思われてもいい。てか実際そんなにお育ちがよろしいわけでもないですしね。

 

ザワついてもいい 

また、インタビュー上で刺激的な発言が出たときは、ややまろやかな表現に書き直して掲載することもある。とはいえ、やはりネットはザワつくこともある。

 

記事の内容に全く関係ない指摘が入って対応に追われたり、これまで応援してくれた人がアッサリ離れて行ったりもした。

 

でもちょっと待ってほしい。 好きな人にとっては身近な台湾の音楽も、日本のリスナー層にはまだまだ広まっていない。だから、ある程度楽しみながら読めるものが無いと、日本のシーンとの距離は縮まっていかないと考えている。

 

もちろん、人をわざと傷つけたり、あえて炎上させるようなことはしない。だけど、お行儀が良いだけでは読まれない。これまでと同じことの繰り返しなら、あえてやる意味は無い。

 

もし一部に嫌われたとしても、自由に意見を発信する場となり、優等生の意見も、尖った意見もきちんと代弁するライターであることを優先する。それが役割だと思うからだ。

  

嫌われる覚悟がもたらしたもの

この決意がもたらしたのは、常に増えていく月間PV数、そしてSNSで寄せていただく応援コメントの数が増えていくことだった。

 

でも、いつも「次の記事は絶対読まれないに決まってる」と思いながら書いている。

  

 

 

 

STEP9:読んでもらえるのは奇跡

(台湾の路上で見かけたピアノ。勝手に弾いたけど怒られなかった。)

 

アクセス解析サービスによると、当サイトへのアクセス流入経路は約6~7割が検索エンジン経由で2~3割がSNS経由のようだ。ありがたいことに海外からのアクセスも多い。

 

さらにTapioca Milk Recordsとして発足後のPVを月別にならしたところ毎月1.1倍~1.3倍ずつ伸びてきている。(独自ドメイン取得直後を除く)

 

少しずつ、私の声が届く人たちが増えてきている。

だから「間違ってないんだな~」とのびのびと書けている。

 

でも、私は読者(様)がいてくれるのは奇跡だと思っている。べつに綺麗事が言いたいのではなく、これには明確な理由がある。

 

SNSに頼るのは危険

まずはSNS流入について。記事が更新されるたびにTwitterやFacebookで宣伝をしているが、いつも「次の記事はアクセス数が0に決まっている」と思いながら書いている。

 

なぜなら、多くの人にとってSNSは単なる趣味だからだ。好意を示してもらえるのは当たり前ではない。さらに感想を寄せてもらえることにはありがたみしかない。

 

昨日まで興味があったことに対して、今日とつぜん興味を失うことはまったく罪にはならない。(もちろん、そうなって欲しくはないけれど)

 

読者様からの好意はありがたく受け取る。けれど、甘え続けるわけにはいかない。だから、継続的に応援してくださる方が現れるたびにいつも「ああよかった…飽きられていなくて…」と思っている。

 

検索流入頼みはもっと危険

それに、検索エンジンに甘えるのはもっと危険だ。「どういう記事を検索上位に持ってくるか」という方針はすぐに変わってしまう。今日はとあるキーワードで検索一位になった記事が、明日にはトップに来ないかもしれない。

  

だから、今ある記事が検索順位が下がってもいいように、次に出す記事を面白く読んでもらう工夫を頑張る。それは、努力して当然だと思う。

 

 

 

 

STEP10:ご立派なことを書いてきたけども

(名探偵コナンめちゃ好き)

 

ここまで「インタビュー」というテーマを軸にして、約8か月の歩みや発見を振り返ってみた。なんだかご立派なことをたくさん書いて、志を持っているようではあるが……私は本当に普通だし、普通のわりに世論に従えないところもたくさんある。

 

大学に行っていない

私の最終学歴は専門学校卒である。だからってわけじゃないけど、20代半ばまでは学歴コンプレックスでどうしようもない時期もあった。

 

TOEICでそこそこの得点をたたき出せたことでコンプレックスは脱ぎ去ったものの、最終学歴が変わるわけではない。だから実力で生きていこうと思う。

 

組織に愛着を持てない 

結果を出したり、目標をクリアしていくことって最強の快楽だと思う。人のためになることがしたい。実際、インタビュー相手には気持ち悪いくらいの向き合い方をしている。

 

でも、他人に決められた組織には居心地の悪さを感じてしまう(たとえば、会社とか)そして世間においては、多くの場合一緒にはたらくメンバーを選ぶことはできない。

 

勘の良い上司はさっさとこの気質を見抜いていて、先回りして「組織とは~」とか「こういう場合は~~すべき」と教えてくれることもあった。しかし、ピンとこないことの方がはるかに多い

 

会社で一旗あげている先輩や上司は眩しい。でも、組織に興味や愛着のもてない私が出しゃばると良い結果をもたらさないので、組織に依存せず自由にできる媒体運営に力を注いでいる。

 

家族に甘えている

それに、家族の前でも特に自立した姿は見せていない。力を借りまくっている。

 

たとえば、ちょっと尖った記事を出す直前などは妹に「記事を公開するプレッシャーに勝てないから、気を紛らわせて!」とお願いしている。いい迷惑である。両親はそんな私を見て「何をやっているかわからないけど、いいんじゃない」と笑顔で応援してくれる。

 

全力で甘えられる場があるからこそ、企画作りや記事を書くことを頑張れているのかもと思う。

 

ではなぜ、普通の事務OLにサマソニ出演アーティストのインタビューができたのか?

 

こんな周りに甘えまくった私が次に目指したもの、それはSummer Sonic出演へ出演するアーティストへインタビューをするということだった。

 

続編「ではなぜ、普通の事務OLにサマソニ出演アーティストのインタビューができたのか」をいずれ公開予定。お楽しみにお待ちください!

 

それでは、再見!