みなさんこんにちは!Tapioca Milk Recordsです。
今年もロックフェスの開催予定が目白押し。そして海外アーティストの来日ニュースで盛り上がる季節となりました。これは西洋のアーティストのみにとどまらず、アジアのルーキーたちの日本進出の勢いも増していく一方です。
その中でもとりわけ見逃せない存在といえば……!?やはりSUMMER SONIC 2018へ出演するNo Party For Cao Dong(中国語:草東沒有派對)でしょう!
No Party For Cao Dongは台湾出身の4人組ロックバンドです。音楽性はグランジ・エレクトロなどを取り入れたサウンドが特徴的。
2012年に結成以来、若い世代を中心に高い支持を得ており、2017年には「Golden Melody Awards(台湾でもっとも権威のある音楽賞)」にてインディーズバンドとしては異例の3タイトルを獲得。そしてワールドツアーも各地でsold outするなど世界のリスナーから熱い視線を浴びているバンドなのですっ!
そんな彼らにE-mailで話を聞いたところ、あたたかみのある素顔や、台湾ならではの事情などもとくと語ってくれたのでシェアしていきます。目次は以下です。お好きなところからどうぞ!
- Interviewee:No Party For Cao Dong(草東沒有派對)
- メンバーとの「どうかしているエピソード」
- 台湾の事情。兵役中の過ごし方。
- 自己との対話を音楽へ
- Golden Melody Awards以降のこと
- お気に入りの台湾、お気に入りの「いつも」
- 【LIVE】SUMMER SONIC 2018
Interviewee:No Party For Cao Dong(草東沒有派對)
Members(写真左、ステージ下手側から);
Bass&Vo :Sam Yang (中文:世暄)
Gt& Vo :Chu Chu (中文:筑筑)
Drums :Fan Tsai (中文:凡凡)
Gt&Vo :Wood Lin (中文:巫堵)
ーーこんにちは~!ええと早速矛盾するようなのですが、今回皆さんへのインタビューを企画したのは「No Party For Cao Dongが台湾で人気のあるバンドだから」という理由ではなくてですね……。
2016年の夏に偶然「爛泥」や「山海」を聴いたときに「こんな音楽性のバンドが台湾にいたとは!?」と頭を100回ほど殴られたような感覚に陥りました。それからというもの、折にふれてライブも拝見しているのですが、ライブへ没入していく感覚にハマりまして。
(No Party For Cao Dongのリードトラック“山海 Wayfarer”)
私もそこまで中国語が得意なわけではないけれど「歌詞が判らなくても、ただライブが良いな」と。そしてこの魅力の原点は一体何だろう?という好奇心がついに抑えられなくなってしまった次第です。
そんな皆さんが日本のロックフェスへの初出演ということで、お題をたくさん用意しました!どうぞよろしくお願いします。
メンバーとの「どうかしているエピソード」
ーーまずは王道の質問ですが…No Party For Cao Dongの皆さんが音楽活動をはじめたきっかけは何でしょうか?
Wood Lin(Gt&Vo):子供の頃、ロックに衝撃と畏怖を抱いたことです。
Sam Yang(Bass&Vo):小さい頃から弾き語りに憧れていたので、ギターを始めてから自然に雑なメロディを作って鼻歌にしていました。
Fan Tsai(Drums):高校生の時に当時ギターサークルの先生を担当していたChu Chuと知り合いになってからです。
Chu Chu(Gt& Vo):単純に音楽が好きだからです。
ーーメンバーとの思い出のエピソードなどを教えていただけますか?
Fan:2012年に復興高中*のギターサークルではじめてChu Chuに出会ったときは、おこりっぽくて短気だなぁという印象を抱いたけれど、彼女を知るにつれてだんだんといい人だということがわかってきました。
*高中… 高級中学の略。日本の高等学校にあたる教育機関。
ーーChu Chuさんはサークルの先生でしたから、立場上おこりっぽくならざるをえなかったのかもしれませんね。
Fan:それからWoodとの初対面は、2013年に台北芸術大学のロック研究サークルで。なんかいかつい顔してるな…と思っていたんだけど、Woodは暖かい笑顔で私に「また遊びに来てね」と言ってくれたんです。その時は意外にもギャップ萌えを感じました。2014年に同じくサークルで初めてSamを見た時、いい人だなと思って。その印象の通り、やっぱりいい人でしたね。
Sam:大学生の時は「どうかしている話」がいっぱいありましたよ。たとえば、ある大掃除でペイントをしてる時は面白かったですね。多くの人の服にはWoodの手形がまだ残っていますよ。
Chu:Samといえば、2016年のワールドツアー中の話なんだけど、彼が荷物をニューヨークに忘れたときに私は彼のことを一からすっかり見直したよ(笑)
Wood:みんなとは長い付き合いだからいろいろあったけど…ほぼ公開できない話なんですよ。
台湾の事情。兵役中の過ごし方。
(オリジナルバンドロゴ。No Party For Cao Dong=草東沒有派對)
ーーここからはあまり日本では知られていない台湾のインディーズシーンについてもお聞きしていきますね。No Party For Cao Dongはいまや世界規模で活躍するインディーズバンドへ成長していますが、最初からワールドワイドでの活動を考えていたのでしょうか。
最初はただ楽しいからバンドを始めました。このあと、こんなにもたくさんの方に好かれたり聞かれたりすることになるとは思わなかったのですよ。
もちろん海外へ行って自分たちの実力はどのぐらいなのかを知りたいと思っているし、また海外を見ることで、これまでとは違うものを取り込みたいと思っています。
ーー世界のほかの地域と比べると、台湾ではあまりインディーズシーンが大手メディアなどのサポートを受けられる機会はそれほど多くないと聞いています。当初は集客面で苦しい時期もあったかと思いますが、この苦境を乗り越えた原動力はなんでしょうか。
「音楽」ということに対する情熱ですね。
ーー現在フェス出演のほか2回目のワールドツアー中でもありますが、このタイミングで日本へ進出したのはどうしてですか?
実は一回目のツアーで行きたかったのだけど、時間の都合が悪くて行けなくなったんです。今回はメンバーが兵役から除隊して時間の余裕も作れたので、ようやく行けることになったんですよ。
ーーなるほど。SamさんとWoodさんは兵役の期間をどのように過ごしていましたか?
Sam:兵役に服している時は、暇な時にインターネットや台南*の友人のおすすめで、これまでに触れたことのないジャンルの音楽も聴くようになりました。そのこともあって、音の組み合わせ方、構成、サウンドとリズムのアレンジ方について、より深く考えるようになりました。
*台南…台湾南部に位置する歴史深い建築物や美食で有名な都市。Samは台南出身。
Wood:キャンプにいる時は、はやく休みにならないかなぁと思って、休みの時は休みが終わるのを怖がっていましたよ。
ーー感性の豊かな時期に表立った音楽活動を中断せざるを得ないことについて、台湾のアーティストしてどのようなご意見をお持ちでしょうか。
Wood:まあ仕方がないことですね。
Sam:実はなかなか良い一年だったと思います。みんなはそれぞれ腕を磨いたり、落ち着いて心の栄養を取りこんで成長したりした後で、また交流できましたから。
自己との対話を音楽へ
(ステージ風景。前列の手前からSam,Chu,Wood/後列 Dr;Fan)
ーーここからは、音楽について気になることをお聞きしていきますね。ライブなどでChu Chuさんがメインボーカルの曲を聴いていると、他の曲と比較してより「台湾味」を感じるんですけども、音楽を通して民族的なルーツを表現したいという気持ちはありますか?
Chu:そういうわけではないのです。人はそれぞれ自分の「持ち味」があると思うので、特定の「ルーツ」を表現しようという考えはないんですよ。
ーーご自身の持ち味を表現するにあたって、歌いながら考えていることはありますか?
Chu:なぜ私は今ここにいるのか、人生をどうやってこんなに大きく生きてきたのかをいつも考えていて……
ーー大きなテーマですね…
Chu:そのせいで歌を間違えました。
ーーFanさんのライブでの様子を見ていますと、女性ドラマーとしては驚くほどのパワフルさと繊細さを使い分けたプレイスタイルが魅力的ですが、このために何か特別体を鍛えているのでしょうか。
Fan:ちょっとお恥ずかしいんですけど、つい最近から定期的に体を鍛え始めたんです。スクワットや腹筋運動などの…筋トレをしています。
ーー2016年にリリースされた1st Albumの「醜奴兒」ですが、このアルバムでは何を表現していますか?
Wood:その時の自分自身。
Sam:愛とそれを伴うすべてのもの。
Fan:愛を!
Chu:青年は憂いを語る。
iTunesでの試聴はコチラ。
ーー収録曲の「大風吹」や「醜」などはツアーやライブによって大胆なアレンジも楽しめるところもだいごみですが、この発想の原点はなんでしょうか。
僕たちは音源をそのまま演奏するよりも、アレンジをする方が面白いと思っていまして。スタジオでのジャムセッションを通して、いろいろと試しながらアレンジを完成させていきますね。
ーーまた、今回のツアーにて発表された新曲ですが、1st album収録曲よりも更に深みのある表現をしているように感じますが、どのようなスタート地点から創作がはじまったのでしょうか。
休んでいる日々の中で、自分自身をもっと深く知ることができたことです。それに音楽と生活に対する新しい見解を得ました。
ーーそれとこれは個人的に気になっていたのですが…これまでのライブでオーディエンスで大瓶のお酒をシェアして、中身をカラにしていくパフォーマンス「變魔術的時間」があったと伺っています。どうしてそんなことをしようと思いましたか?
少しお酒を飲んでもらって、場を盛り上げて、リラックスしてライブを楽しんでほしいんですよ(笑)
編集部注:台湾には「小酒怡情, 大酒傷身(少し飲めば友達と仲良くなるけど、飲みすぎると体に悪い)」という言い回しがあります。
Golden Melody Awards以降のこと
ーーやはりバンドにとって大きなニュースといえば、2017年にGolden Melody Awardsにて各賞を受賞したことだと思いますが、このことは活動に影響を与えていますか?
人の目がたくさん集まることへの対応を学ぶと同時に、作品への素直な気持ちを保ち続けることが大事だと思いました。
ーー少し意地悪な質問かもしれませんが…音楽賞を受賞したとはいえ、現在の台湾国内においては、あなたたちのことを深く知っているか、全く知らないかの2極化していると感じています。このことについてどうお考えですか?
ただ自分のまま表現をして、やることを真剣にやって、草東が好きな人を探しているのです。特定の街やタイムゾーンを狙っているわけではないのですよ。
ーーお話を伺っていると、音楽に対する姿勢がかなり純粋であることをひしひしと感じます。皆さんが音楽を続けていく理由は何でしょうか。
やはり愛ですね。それに、私たちはもう慣れているからです。音楽はもうすでに生活の一部分になったのです。
お気に入りの台湾、お気に入りの「いつも」
(「如常」のツアーフライヤー)
ーー現在皆さんはフェス出演のほかワールドツアー「如常」(日本語訳:いつも通り)の真っただ中ですね。皆さんにとって台湾で過ごすお気に入りの「いつも通り」を教えていただけますか。
Wood:食べ物が美味しくて、気まぐれ。
Sam:のんびりしている足並み。
Fan:夜食が食べたくなったら、いつでも食べられるところ!
Chu:階下のおばさんが光熱費をもらいに来ること。
ーー本当に飾らない「いつも」ですね…!また台湾と日本は地理的にも近い国ですが、音楽シーンに興味はありますか?もしあれば、印象に残っている曲やアーティストを教えて下さい。
Wood:ありますよ、マキシマムザホルモンとサカナクション!
Sam:うん、サカナクション。
Fan:TOE~
Chu:椎名林檎‐能動的三分間!
ーーかなりご存知でいらっしゃる。
ーーそれでは最後に、サマーソニック2018のお客さんへひとことお願いします!
*編集部注:日本語でお返事を頂きましたので、そのまま掲載いたします。
ーーありがとうございました。これからのご活躍も楽しみにしています!
【LIVE】SUMMER SONIC 2018
SUMMER SONIC 2018
No Party For Cao Dongの出演情報はコチラ。
日程:2018年8月18日(土)
出演ステージ:Billboard Stage
出演時間:11:35~
※詳しいタイムテーブルは公式サイトをご確認ください。
【編集後記】
いかがでしょうか。
「Golden Melody Awardsで3タイトルを受賞」「各地でチケットがソールドアウト」と耳にするとつい構えてしまうものですが…今回のインタビューを通して浮かび上がってきたのは、ただひたむきに自分自身の内面に向き合い、自己表現をし続けるという精神性。そしてお人柄のチャーミングさでした。
この魅力が皆さんに伝わりましたか?そんなインタビューテキストが書けていたら、筆者の作戦は大成功です。
あとはYoutube公式チャンネルなども参考にしていただき、サマーソニックへ足を運ぶ皆さんも、そうではない皆さんも彼らの音楽性を確かめてみて下さいね。
筆者はこれからも彼らを追いかけつづけていくことでしょう。
だってタピレコは、彼らに出会ったことではじまったWebサイトですから。
それでは、再見!
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なぜ、普通のOLに海外アーティストへのインタビューができたのか。8ヵ月分の作戦を全て公開します。
Special Thanks
Seen Leeさん (吹音楽 Senior Editor)
当記事の企画にあたり、現地音楽メディア 吹音楽(Blow Music)のSeen Leeさんに全面的にご支援を頂きました。温かいご支援に心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
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