オリジナルのインドネシアン・モーメントを世界へ発信ーHMGNCへインタビュー!

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TEXT By Megumi.N 
Photo by HMGNC

 

 思い起こすこと約二カ月前、横浜関内のライブハウスB.B Streetへ遊びに行った。どうやらインドネシアの音楽グループが出演するということだ。現地ユニクロのTVコマーシャルにも楽曲が起用されるなど、インドネシアのシーンにて相当な人気を誇っているとのうわさを聞きつけた。

 

 いつも当サイトでは台湾のアーティストをメインに取り上げているが、台湾以上にインドネシアのカルチャーシーンはなかなか捉えにくいものである。多くの日本人にとって、インドネシアの音楽文化といえば伝統的なケチャックダンス、ガムラン、そしてアイドルグループのJKT48だろうか?

 

 予備知識もあまり無い中で「なんだか面白そうだなぁ...」という心持ちでライブを観に行ったところ、空間ごと包み込むような分厚い電子音楽のステージに釘付けになり、あっという間に引き込まれた。

 

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 というのも、実はわたくし。もともと電子音楽が好きなのだ。

 

 途中の機材トラブルをものともせず、笑顔で堪能な英語のMCで場をつなぎ、自然体のままで場を盛り上げる3人。

 

 その様子にいたく感動し突発的にインタビューを申し込んだところ快く了承していただけたので日本の皆さんとシェアしていく。

 

 

 

 

インドネシアの電子音楽シーンのパイオニア、HMGNC

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 そのバンドとは、インドネシアの学園都市バンドンを拠点に活動する「HMGNC(ホモジェニク)」。2002年にDina,Grahadea,そして初代ボーカルRisaの3人にて結成。2009年にRisaが離脱し、2010年より2代目ボーカルのAmandiaが加入し現体制となった。

 

 インドネシアの大型フェスにも出演し、ユニクロ・インドネシアのテレビCMにも楽曲が起用され、2013年にはVoice Independent Music Awards* で各賞を受賞するなどアジアを拠点に幅広い活躍を見せるHMGNC。彼らをとりまくシーンやこれまでのことについてとても気さくに語ってくれた。

 

 *Voice Independent Music Awards…アジアのインディーズミュージックアワード。主にインドネシア・マレーシア・シンガポールより各国のアーティストがノミネートされている。

 

ダンス・ミュージックを半分のテンポに切ってみたのがはじまりなのです

 

(楽曲が起用されているユニクロインドネシアのCM)

 

ーーライブを観ていて、濃厚な電子音楽の世界に夢心地になりました。インドネシアには、あなたたちのような電子音楽のグループはほかにもいるのでしょうか?シーンはどのように始まったのですか?

 

HMGNCインドネシアの電子音楽シーン自体はだいたい2000年頃から盛り上がりを見せており、当初はレイヴ・パーティー、そしてダンス・パーティーが流行っていました。ダウンテンポの電子ポップ、エレクトロポップでは私たちHMGNCがパイオニアなんですよ。

 

ーーなるほど。自ら曲を作り始めたのはどのようなキッカケでしょうか?

 

HMGNCもともとハイテンポのダンス・ミュージックが好きで。ためしにテンポを半分に落として少しいじってみたところ、ダンスミュージックを上回る快感を発見したのです。

 

ーー電子音楽といえばやはり欧米のアーティストのイメージがありますが、海外の影響なども受けているのでしょうか。

 

HMGNCみんなそれぞれで、DinaとGrahadeaはヨーロッパ系…イギリスの音楽の影響を、Amandiaはどちらかというとアメリカの影響を受けています。あとは、アイスランドのビョークですね!私たちはビョークのアルバム「Homogenic」からバンド名を取っているんです。

 

ーーメンバーの皆さんはどのようなきっかけで知り合ったのでしょうか?

 

HMGNC実はオンラインのチャットルームがきっかけで出会いました。My Spaceの少し前に流行った「MIRC」というものです。日本のIRCやYahooメッセンジャーのような存在ですね。

 

当初は別々のバンドにいて、それぞれ音楽活動をやっていたのですが…。共通の友達を通して電子音楽の話が盛り上がったことをキッカケにバンドを結成しました。Amandaは2010年にボーカルの交代があって、2代目のメインボーカルとして加入したんですよ。

 

ーーオンラインで出会うなんて現代的だ…。インドネシアでは作った曲をどのように配信していますか。デジタルとCDではどちらが多いでしょうか?

 

HMGNC2008年ごろまではCDが主だったのだけど、そのころから音楽ビジネス自体が変化してだんだんとデジタル化されていった感じですね。CDショップもどんどん経営が厳しくなって…。今はCDも無くなってはいないのだけど、メインはやはりデジタル配信ですね。

 

ーー初歩的な質問で恐縮なのですが、皆さんはインディーズシーンでご活躍されているのでしょうか?

 

HMGNC私たちはインディーズバンドです。ただインドネシアにおいては、インディーとメジャーというのはほとんど区別が無くて、ただ"テイストの問題"になってきているんですね。それに一番新しいアルバム「HMGNC」はレーベルとは関係なく、セルフリリースしたものなんですよ。

 

ーー結成から16年が経って、活動の感触はいかがですか。

 

HMGNCたくさんのファンに支えられている一方で、まだニッチなところにいますね。私たちのような電子音楽では、一般のメインストリームには入りづらいものですから…ただ、今では楽曲そのものを評価してもらえていて、ユニクロインドネシアやタバコのCMなどにも起用されているのです。これからもっと頑張りたいと思っています。

 

インドネシアの「moment」を世界へ発信

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 ーー衣装を拝見していて、ちょっと変わった柄だなぁ…と感じたのですが、今回女性メンバーのお二人が着ているのは民族衣装でしょうか?

 

HMGNC今回のツアーの衣装はすべてインドネシアのデザイナーとコラボしたものなんですよ。以前はpinxと、今回はDibbaというデザイナーとコラボレーションしています。

 

そのほかにも、Assa,Reika,PMP,Unkl347など多くのモダンなアパレルブランドとコラボレーションをしてきました。

 

 
 
 
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ーーファッションと音楽が融合して、カルチャーを創るという側面もあるのでしょうか?

 

HMGNCまさにその通りです!それにHMGNCはアパレルだけではなくさまざまなエレメントとコラボレーションすることが好きなんですよ。たとえばコーヒーのメーカーさんとコラボして、コーヒーを飲むときに私たちの音楽を聞いてもらったりしています。

 

ーーなるほど!オシャレなBGMがかかっているカフェは居心地も良くて、自然と足を運びたくなりますものね。

 

HMGNC単に音楽活動を展開するだけでははなく、オリジナルの「moment」を創るということですね。

 

ーーまた音楽活動を通してインドネシア人のルーツを表現したいという気持ちはあるのでしょうか?

 

HMGNCそうですね、やはりインドネシア人としてのルーツを発信していきたいというのはあります。それに加えて、今回のツアーは多くの方のサポートで成り立っているのですけど、その中でも一番大きな機関はインドネシア政府の創造経済省というところがあるのですが、そこで渡されたミッションがありまして……

 

ーー政府からの援助も受けているんですね。す、すごい。

 

HMGNCインドネシアではだいたい5年前くらいから政府がサポートする動きをはじめてくれたのです。色々なところに足を運んで、サポートを受けられるところを探しながらやってきました。

 

政府から私たちに渡されるミッションは「現代のインドネシアを見せる」ということなんです。「インドネシアにあるものはただ単に伝統的なものだけではないよ、今は現代化してモダンになっている!」というアピールを世界へ発信するために、ローカルのブランドやデザイナーとコラボしているのです。

 

今回も伝統的なソンケット*やバティック*の現代化された作品である衣装を持ってきて、紹介するという任務もあります。

 

*ソンケット…バリ島に伝わる伝統的な機織り。

*バティック…インドネシア・マレーシアに伝わるろうけつ染めのこと。

 

ーーインドネシアという国が豊かに、そして現代的になっていることを感じます…。たくさんの応援を受け止めて、今後HMGNCはどのような存在になっていきたいでしょうか?どのようにカルチャーに影響を与えたいでしょうか。

 

HMGNCこれからの若い世代のために「どの分野でもずっと作品を作り続けられる」という可能性を与えたいです。そして、それぞれの作品を常に進歩させ、もっとよりいいもの作るための変化の存在にもなりたいのです。

 

また、次の世代には"何かをマネする"よりも自分で"オリジナル"な作品を作る世代になれるためのインパクトを与えたい。すぐに結果を欲しがるのではなく、プロセスを一歩一歩、歩んで達成する、という過程も見せていきたいと思います。

 

ーーありがとうございました!また是非日本へツアーにおいでください!

HMGNCオフィシャル情報

Special Thanks 

Yuki Lee さん from Fontana Folle ー今回の取材にあたり、Yuki Leeさんよりたくさんのご協力を頂きました。あたたかなサポートに感謝いたします。本当にありがとうございました!

 

Yukiさんは、ジャズアンサンブルFontana folleのベーシストとしてご活躍される傍ら「アジアのポップスを聴き倒す会」を隔月で開催しています。次回は2018年12月12日(水)の予定です。年々盛り上がるアジアポップスをチェックできるまたとないチャンス!ご興味のある方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか?

 

Facebookイベントページ:アジアのポップスを聴き倒す会 第2回 台湾+インドネシア編

 

www.youtube.com

(Fontana Folleの1stEPの試聴動画。ボーカルAlvinさんはインドネシア出身とのこと。) 

 

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